5月25日に気象庁が発表した3ヶ月予報によると、今年の夏の日本全国の天気は平年に比べて晴れの日が少なく曇りや雨の日が多くなり、気温は平年並みになる見込みだという。
平年並みといわれると「今年の夏は、それほど厳しくないかも」という錯覚に陥りがちだが、東京の平均値をみてみると、7月下旬でおよそ30.6度、8月上旬になると31.1度にもなるから、決して過ごしやすい温度というわけではない。
そんな暑い夏に活躍するのがルームエアコンだが、近年では室内の空気を冷やしたり温めたりするだけでなく、様々な機能を搭載したエアコンが出回っている。例えばシャープ<6753>の「D-SXシリーズ」は、同社の看板商品でもあるプラズマクラスターを搭載しているし、東芝<6502>の「大清快 GDRシリーズ」はフィルターだけでなく熱交換器まで洗浄できるセルフクリーン機能や4kgの洗濯物を3時間で乾かす衣類乾燥機能なども搭載している。また、パナソニック<6752>の「Xシリーズ」は、空気清浄やセルフクリーン機能の他、電気代もチェックできるUDリモコンやスマートフォンでの遠隔操作など、今どきの機能が満載だ。
一方、海外市場で今注目されているのが、日本のルームエアコン市場ではすっかりおなじみのインバータ搭載エアコンだ。日本国内のエアコンには今やほぼ100%搭載されているインバータも、実は海外での普及率は決して高くないのが現状だ。しかし、電力事情は世界規模で年々逼迫していること、さらには新興国でのルームエアコンの普及などを背景に、今後は海外の市場でも需要拡大が大いに期待されている。
インバータは直流電力から交流電力を逆変換する電源回路、またはその回路を持つ電力変換装置のことで、エアコンをはじめとする、あらゆるモーター製品の動きを無駄なく効率良くコントロールするものだ。インバータを搭載したエアコンは、搭載していないエアコンに比べて使用電力を約30%も低減することができるといわれている。
そんな中、電子部品大手のローム株式会社<6963>が5月、家電製品のインバータ化を促進する高耐圧ファンモータドライバ「BM620xFS シリーズ」の開発を発表している。本製品は累積出荷実績5000万個以上を達成し、その技術で高評価を得ている同社のモータコントローラを、ロームオリジナルの600V耐圧PrestoMOS(プレストモス)搭載のドライバに内蔵して1パッケージ化した製品だ。ロームが長年培ったアナログ設計技術とパッケージ技術を駆使し、デバイスのもつ高いパフォーマンスを最大限に引き出せるよう最適化されているため、ルームエアコンをはじめとする家電製品のインバータ化を極めて簡単に、かつ高効率で実現することが可能だ。
新興国での普及の鍵の一つは価格の問題だ。インバータ搭載商品はこれまで、低価格帯商品への搭載は難しかった。しかし、開発が簡単になればコストパフォーマンスも向上する。さらに、低損失のパワーエレクトロニクスデバイスとして期待されているSiCデバイスを用いたインバータは、従来型インバータに比べて飛躍的な効率向上が見込まれていることなどからも、新型インバータに対する注目度は世界的に高まっている。
ダイキンの調べによると、アジア市場での住宅用エアコン年間販売台数約550万台に対し、インバータの搭載比率は約12%、中国においては年間2100万台に対してわずか7%に留まっている。しかし、今年末に発足するASEAN経済統合体(AEC)によってアジア経済の活性化が見込まれる中、家電製品などの需要も拡大するだろう。日本印のインバータ搭載エアコンの普及も大いに期待したいところだ。(編集担当:藤原伊織)