民主党の細野豪志政調会長は、今月8日に文部科学省が国立大学に対し、人文社会科学系学部・大学院について、『組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努める』よう通達したことに「文科省が言う『社会的要請』という言葉からはマーケットメカニズムの匂いが強く漂っている」と純粋な学問探究、学術研究から実学奨励への動きに強い懸念を示し「もはや、文部科学省はその名前に値しない」と批判した。
細野政調会長は「京都大学の山極寿一総長は『京大にとって人文社会系は重要だ』と廃止や規模縮小を求める文科省の通知を拒否した」とし「新任総長の勇気ある発言に強く賛意を表したい」と応援している。山極氏が理学部出身であることも、人文社会系の重要さを主張した意義は大きい。
文部科学省の通達は各国立大学が中期目標、中期計画を作成する際に参考にするもので、交付金を受け取る大学側にとっては無視できない。ただ、学問の府が国際競争に打ち勝つための産業界支援の技術開発・研究機関の色彩を強めることになるばかりでなく、純粋な学問探究への費用が大幅に削減される危険性が高い。
一方で、大学が軍事研究に関与する危険性も高まっている。今月9日の参院外交防衛委員会で共産党の井上哲士議員は「大学が軍事研究の場になりかねない」と防衛省が3億円の予算をつけ、4月にスタートさせた「安全保障技術研究推進制度」の危険性を取り上げた。
制度について「戦争目的の科学研究を行わないとしてきた学問研究の分野に(防衛省が)入っていくもので、戦争法案と一体のものだ」と非難。制度廃止を求めている。
「防衛装備品の研究開発に活用することを目的に、大学の研究機関や企業から技術提案を募り、研究資金を配分する」制度は軍事産業と政府、大学連携の土壌になりかねない。(編集担当:森高龍二)