宮﨑礼壹元内閣法制局長官(法政大学法科大学院教授)は22日、衆院安保特別委員会に参考人出席し「法制局長官の経験を踏まえて意見を述べたい」としたうえで「集団的自衛権の行使を容認する部分の安保法案は憲法9条(戦争の放棄)に違反する。速やかに撤回されるべき」と断言した。
宮﨑元内閣法制局長官は「集団的自衛権とは現政権も認める通り、自国が直接の武力攻撃を受けていないにもかかわらず、自国と密接な関係があるという理由で、他国に加えられた武力攻撃に対し、自ら武力をもってこれを阻止、排除する国際法上の権利。本質は他国防衛であり、歴代政府もそのように理解し、説明してきた」とした。
また宮﨑元内閣法制局長官は「個別的自衛権と集団的自衛権は異質な概念。また集団的自衛権は恣意的で過剰な武力行使を招く危険をはらんでいる」と説明し「政府は、集団的自衛権は独立国として保有しているのは自明であるが、憲法9条の下では、その行使を認める余地はないと解釈してきた」と説明。
そのうえで「政府の憲法解釈は単なる説のひとつではなく、各種法案提出の際、毎年の防衛予算の承認を求める際、その都度、政府が責任を持って説明するため、国会で累次、表明してきたもの」と政府解釈の重さを強調。
「政府解釈は単なる法制局長官の答弁というものではなく、総理答弁や閣議決定を経て出される政府答弁書においても表明されてきた。国会の承認もこれに基づいてなされてきた。昭和47年からでも40数年に達し、憲法9条の下では、集団的自衛権の行使は認められないという解釈は確立した解釈と考えるべき」と述べた。
宮﨑元内閣法制局長官は「政府自身が、この解釈を覆す法案を国会に提出するのは、法的安定性を自ら破壊するもの」と警鐘を鳴らした。
宮﨑元内閣法制局長官は「政府は集団的自衛権の行使は限定的に認めようとするものであるので、従来の政府見解にも、基本的に反するものでないとしているが、政府の主張は、憲法9条も最小限度の武力行使を否定するものではない。集団的自衛権も自衛の措置なのだから最小限度でさえあれば、本来、行使可能であった。当時は、そこまで必要な国際情勢ではなかったので、あきらめの結果として集団的自衛権の行使は最小限度を超えるとしたにとどまるとしているが、とんでもない話だ」と指摘。
宮﨑元内閣法制局長官は「砂川判決に集団的自衛権が入る余地はない」。また47年政府意見書からの見解でも集団的自衛権の行使は許されないとするものであり、「政府(安倍内閣)の主張は白を黒と言いくるめる手法としか言いようがない」と批判した。
「自国防衛と称していながら、攻撃を受けていないのに武力行使するのは、先制攻撃そのもの。自国の利益とかかわりない、あるいは希薄な集団的自衛権などというものが、かつて主張されたものがあったのか」と問題提起したうえで「どこの国も死活にかかわるとして自国の軍を出してきた」と集団的自衛権が恣意的で過剰な武力行使を招く危険をはらんでいること、現行憲法では行使は認められないことを説明した。(編集担当:森高龍二)