出版不況により粟田出版販売が民事再生申し立て

2015年06月29日 07:29

 「本が売れなくなった」「出版不況」そうしたことが言われて久しい。事実、近年では書籍や雑誌などの販売が落ち込んでいる。なぜ本(雑誌)が売れなくなったのか?様々な原因が絡み合ってそうした状況を生み出してしまっているのだろうが、そのうちの1つに「スマートフォン(多機能携帯電話)の普及の影響」や「電子書籍の普及の影響」が関係していることは想像に難くない。朝の電車で通勤中のサラリーマンや、通学中の学生を見てみると、みな一様にスマートフォンを手にしており、本や雑誌、新聞などを読んでいる人はかなり少ない。なかには、タブレット端末により電子書籍を読んでいる人もいる。かつて「電車の中での暇つぶし」は本・雑誌と相場が決まっていたが、そうした状況は少しずつ、しかし確実に変わりつつある。

 そうした時代の変化を如実に表すかのように、出版取り次ぎ第4位である粟田出版販売が26日、民事再生法の適用を東京地裁に申請した。帝国データバンクによれば負債総2014年9月末の時点で約134億9600万円、書籍販売が落ち込んだ影響により14年9月期の売上高は329億円で10期連続の減収。決算期変更前の1991年10月期の半分以下となっていた。当面は出版業界最大手の日版の子会社「出版共同流通」が資金を支援し、インターネット通販大手の楽天<4755>が筆頭株主である業界第3位の大阪屋との統合を目指すとしている。

 粟田出版販売は1918年に粟田書店として創業。74年に今の社名に変更された。週刊誌や月刊誌など雑誌類を主体に、書籍、文庫本、児童書、コミック、専門学術書など幅広いジャンルを仕入れ全国約1800店舗の書店に販売し、91年10月期には約701億7900万円を計上していた。そして2008年には大阪屋と業務提携し、物流システムの効率化をはかるなど経営改善に努めてきていたが、14年9月期の売上高は約329億3100万円にまで減少し、債務超過となっていた。帝国データバンクによれば、出版取り次ぎでは過去最大の倒産となるという。(編集担当:滝川幸平)