帝国データバンクが8日に公表したデータによると、2014年度の出版関連倒産件数は、前年度比 53.3%増の46件となった。2009年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」により、倒産件数は減少傾向をたどっていたが、3 年度ぶりに増加に転じた
「出版不況」が叫ばれて久しい。全国出版協会によると、雑誌や書籍の販売金額は約1兆6823億円(2013年)で、ピークだった1996年から約1兆円も縮小している。
帝国データバンクが8日に公表したデータによると、2014年度の出版関連倒産件数は、前年度比 53.3%増の46件となった。2009年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」により、倒産件数は減少傾向をたどっていたが、3 年度ぶりに増加に転じた。負債総額は、前年度から272.5%増の111億8000万円。負債額が29億円と大きかったインフォレストは、人気雑誌「小悪魔ageha」などを手がけていたこともあり、注目を集めた。
倒産が増えた背景には、スマホの普及で、ネットを通じて情報収集する消費者が増加したこと、消費税引き上げで、雑誌にお金をかける人が減少したことなどが関係している。負の要因が重なり、14年度上半期の倒産件数は19件(前年同期比+11.8%)、下半期は27件(同+107.7%)と、増加ペースが加速した。
ちなみに過去10年間の推移を見ると、出版関連の倒産は2009年度に56件とピークに達したが、 2009年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」などの影響で、13年度には30件まで減少している。ただ、出版不況の波は大きく、14年度には前年度を53.3%上回る46件にまで増加してしまった。消費増税の影響は、かなり大きかったのではないか。
昨年の負債額トップは、女性向け「小悪魔ageha」「nuts」、男性向け「Samuraiマガジン」など、若者向けファッション誌を手がけていたインフォレスト(29億円)。2010 年に、親会社・代表者がそれぞれ変わって以来、販売部数が落ち込んでいた。
児童書の「こびとづかん」シリーズが人気を博していた長崎出版(株)も、昨年9月に破産。負債額は12億円と大きく、こちらも話題を集めた。パズル・クロスワード誌 「漢字館GOLD」や「別冊漢字館」などを手がけていた(株)青空出版も、3億円の負債を残して破産している。
今年に入ってからは、「美術手帖」「美学」などを出版していた(株)美術出版社が、民事再生法の適用を受けた。負債額は19億円だ。中小出版社にとってはまさに「冬の時代」である。(編集担当:北条かや)