国内の酒類マーケットが伸び悩んでいる。矢野経済研究所が先月、公表した13年度の国内酒類市場(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比100.2%の3兆6301億円、14年度は同99.3%の3兆6054 億円だった。13年度は一見拡大しているようにみえるが、これは消費増税前の駆け込み需要が大きかったため。実質的には13~14年度にかけて、市場はマイナス成長だったとみる。14年度も駆け込み需要の影響が4~6月頃まで残り、消費が低迷。夏場も天候不順で、ビール類を中心に市場全体が停滞した。
カテゴリー別にみると、「ビール」、発泡酒に麦由来の蒸溜酒等を加えるなどして作る「新ジャンル(第三のビール)」、「清酒」、「甲類焼酎」、「乙類焼酎」の5カテゴリーが縮小。プレミアムビールやクラフトビールの人気拡大など明るい話題もあったが、一時流行した「新ジャンル」の売れ行きがふるわなかった。
一方、消費者の健康志向を受けた商品が市場に投入されるなど、新たな動きもある。発泡酒ではキリンビール「淡麗グリーンラベル」やアサヒビール「スタイルフリー」など、以前から「糖質オフ」や「糖質ゼロ」を謳った商品が人気を集めている。14年度は「糖質ゼロ・プリン体ゼロ」をうたう“ゼロゼロ”系商品が各社から発売され、発泡酒の売上に貢献した。ブームが一段落した「新ジャンル」からも、糖質ゼロの商品が多く発売されている。
ノンアルコールビールテイスト飲料でも、健康を気にする人向けの「トクホ飲料」が充実しそうだ。15年5月にはサッポロビールから「SAPPORO+(サッポロプラス)」が発売され、機能性表示食品では、キリンビールが「パーフェクトフリー」、アサヒビールが「アサヒスタイルバランス」を6月に発売。これらの新商品が、どのくらい市場に貢献するか注目される。
「ビール」や「清酒」が伸び悩む一方、NHKの朝ドラ「マッサン」人気もあって「ウイスキー」は好調だった。「ワイン」や「低アルコール飲料」も堅調を維持している。「低アルコール飲料」でもビールと同様、パッケージに「プリン体ゼロ」などの表記を大きく記載する商品が増えており、売上が伸びている。ここ数年、マイナス成長が続く国内酒類市場だが、“ゼロゼロ”系飲料や低アルコール飲料、ウイスキーブームの影響などによっては、もしかしたら「巻き返し」があるかもしれない。(編集担当:北条かや)