お酒の市場低迷を覆す?低アルコール“RTD”の躍進

2015年03月13日 18:40

画・お酒の市場低迷を覆す?低アルコール“RTD”の躍進

少子高齢化により、国内の酒類市場が低迷している。特に若年層のアルコール離れは、酒造メーカーに深刻な波紋を及ぼしている。しかしそんな中“RTD”と呼ばれる低アルコール飲料が唯一売上げを拡大しており、市場を活気づける起爆剤としての期待が高まっている。

 少子高齢化により、国内の酒類市場が低迷している。特に若年層のアルコール離れは、酒造メーカーに深刻な波紋を及ぼしている。しかしそんな中“RTD”と呼ばれる低アルコール飲料が唯一売上げを拡大しており、市場を活気づける起爆剤としての期待が高まっている。

 RTDとは“レディ・トゥ・ドリンク(Ready to Drink)”、即ち栓を開けてすぐに飲めるという意味。アルコール分10%未満のチューハイ、ハイボール、カクテルなどが該当する。

 サントリー<2587>の調査に基づく「RTD市場の推移」によると、RTD飲料の総出荷数は、2009年の2370万ケースから13年には6580万ケースに増加。わずか4年で3倍近くも販売数を伸ばしている。

 その急成長の要因の1つには、主に20代の男女、つまり初心者に受けがよい「あっさりとした甘めのお酒」が普及してきたことが挙げられる。例えばサントリーの「ほろよい」シリーズや、キリンの「氷結」「本搾り」等がある。近年の若年層は、甘味がありフルーティー、低アルコールで香りがよい、そんな「優しいお酒」を好む傾向があるという。

 一方、もう一つの見逃せない要因としては、RTDでありながら“甘くない”ストロング系商品の需要が大きく伸びてきたことがある。これまでビールや焼酎類を愛飲してきた30~50代男性が、08年頃の景気低迷を境として辛口でドライな高RTDに乗り換え、右肩上がりにシェアを拡大しているという。「一缶で、安く早く酔える」そんなストロング系RTDの登場は、時代のニーズに見事にマッチしたのだろう。また「糖類・糖質ゼロ」「プリン体ゼロ」等、近年の健康志向に配慮した付加価値を前面に押し出しているのも、売り上げ増大に繋がっている一因と見られる。

 このRTDでは現在、サントリーが圧倒的な販売数量を誇っている。「ほろよい」「ストロングゼロ」「角ハイボール缶」など人気のラインナップがひしめいている。しかし「氷結」で知られるキリンビール<2503>も、これに負けじと昨年6月、新ブランドの「ビターズ」を販売開始した。また10日には“ウルトラライトアルコール”と称し、アルコール1%の新商品「バタフライ」を発売予定だ。

 他の酒類企業も、将来的にポテンシャルの大きなこのRTDには熱い視線を送っている。今後、体にも優しい低アルコールのお酒はますます多種多様となり、クオリティを高めながら私たちの食卓に浸透するのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)