熱を帯びるデジタル地図技術の取得競争 自動運転技術の実用化に不可欠

2015年07月30日 12:21

 デジタル地図技術の取得競争が熾烈になっている。スマホの普及でデジタル地図の需要が拡大しているだけではなく、自動運転技術の実用化にデジタル地図技術が不可欠となるからだ。

 現在、世界各地の道路を広範囲にわたって地図に再現する技術力を有するのは、フィンランドの通信機器大手ノキアの地図・位置情報サービス子会社ヒア、オランダのトムトム、米グーグルの3社のみ。しかも、信頼性の高いデジタル地図を、自前で開発するには膨大なコストがかかる。

 IT業界では、地図機能で先行するグーグルの牙城を崩そうと、各社がしのぎを削っている。アップルは、2012年にトムトムとデジタル地図に関するライセンス契約を締結している。アップルは7月はじめには、独自のストリートビュー的な機能を備えた地図データベースを構築していることを明らかにした。

 こうした中で、BMW、アウディ、ダイムラーのドイツ高級車メーカー3社がヒアを共同買収することが、7月21日に明らかになった。買収額は25億ユーロ(約3400億円)を超えると報じられている。ヒアは、欧州、北米のカーナビゲーションシステムを標準搭載した自動車で約8割のシェアを握っている。

 今年4月に同業の仏アルカテル・ルーセントの買収を決めたノキアは、通信機器に経営資源を集中し、ヒアは売却する方針を示していた。

 買収を決めたドイツの3社以外にも、ヒア買収では、フェイスブック、配車サービスのウーバーテクノロジーズ、電子商取引サイトのアリババ集団などの名前が取り沙汰されていた。

 今回、ドイツの3社が企業連合を組んで買収にこぎつけた背景には、自動運転技術の開発競争でアメリカ企業に負けられないという危機感があったと見られる。もともとヒアは、ノキアがアメリカの大手地図メーカー「ナブテック」を買収して子会社化した企業だ。

 自動運転技術の実用化が迫るにつれ、デジタル地図技術の取得競争はさらに激烈になるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)