「侵略」の文言が客観的な歴史を示す

2015年08月09日 11:26

 国会答弁でも「侵略」との言葉を避け続けてきた安倍晋三総理は、戦後70年談話においても使いたくない姿勢を崩していないもよう。「侵略」の文言を入れるのかどうか、先の大戦に対する歴史認識を現内閣がどの立ち位置で客観的にみているのかが談話によって明確になるだけに、文言ひとつで近隣諸国との関係への影響は避けられそうにない。総理談話は14日に閣議決定のうえ、出される予定。

 安倍総理は、今年1月25日のNHK番組で「歴代内閣が用いてきた(植民地支配や侵略の)文言にこだわらない」との考えを示していた。

 「植民地支配」や「侵略」の文言は日本政府が日本の歴史の反省の中で、その事実を直視し、端的に表現した文言で、最も使いたくない文言をあえて使用し、歴史認識と日本政府としての反省を表明したものといえよう。しかし、安倍総理は「侵略の定義は定まっていない」などとして使用を回避し続けてきた。

 この番組での総理発言に、民主党の岡田克也代表は同日「総理は植民地支配とか侵略という表現にこだわらないということを明確に言われたと思う。歴代内閣が使ってきた表現にこだわらないということは、考え方が違うという疑念を招きかねない」と懸念を示していた。

 また「われわれ国民としても先の戦争に対して真摯に反省しながら戦後70年やってきたわけだから、そこのところが1内閣1総理大臣の考え方で変わってしまいかねない。そのことに非常に危機感を持つ」とも話していた。

 閣議決定の談話であれば、内閣と内閣を支える自民、公明の責任も重く、閣僚には太田昭宏国土交通大臣がおり「植民地支配」「侵略」「お詫び」のキーワードが間接表現でなく、ストレートに使用されるかどうか、今後、高校必修科目に据える近現代史中心の歴史教科書「歴史総合」にも反映されることから、教育姿勢にも影響が出ることは避けられない。公明党は「侵略」という文言も明確にと位置づけを求めている。「侵略」の文言が客観的な「歴史」を示すことになり、反省とおわびの意味につながるといえる。(編集担当:森高龍二)