【不動産業界の4~6月期決算】企業向けの賃貸オフィスビル、商業施設も、個人向け分譲住宅も、投資家向け物件も好調

2015年08月15日 20:24

 8月7日、不動産大手5社の4~6月期本決算が出揃った。減収減益の野村不動産HDを除く4社は経常増益で、三井不動産などは最終利益が2.3倍になった。良好な企業業績や景気の回復を背景に賃貸のオフィスビルや商業施設も、マンションなど個人向けの分譲住宅も、REITなど投資家向けの物件もみな好調で、海外プロジェクトも収益化している。当分の間、テナントになる企業業績も景気も地価も金利情勢も不安要素になりそうにないので、通期の業績見通しは手堅く達成できる見通し。

 ■オフィスビルの空室率は低下、賃料は上昇

 4~6月期の実績は、三井不動産<8801>は売上高8.4%増、営業利益53.7%増、経常利益87.4%増、四半期純利益125.7%増(約2.3倍)の増収、大幅増益。売上高、経常利益、最終利益は4~6月期では過去最高だった。主力の賃貸事業では特に商業施設が好調で、賃料収入は14%増でその増加率はオフィスビルのそれをしのぐ。4月に埼玉県に「ららぽーと富士見」が開業した他、既存物件のアウトレットモールの建て替え、増床も集客増、賃料収入増をもたらした。分譲事業の営業利益は2.5倍。個人向け住宅分譲が好調で、オフィスや商業施設のREITなどへの投資家向け売却益も伸びている。

 三菱地所<8802>は営業収益9.6%増、営業利益34.2%増、経常利益38.3%増、四半期純利益8.7%減の増収、最終減益。経常利益は4~6月期としては過去最高になった。賃貸のオフィスビル事業は東京・丸の内を中心にテナントが増えて空室率が低下し、賃料も上昇した。この事業の営業利益は23%増で、金額ベースでは全事業中で最大の伸び。住宅事業は前年同期の営業赤字から10億円の営業黒字に転換した。最終減益の要因は前年同期に計上した負ののれん代がなくなる見通しがあるため。

 住友不動産<8830>は営業収益6.5%減、営業利益0.3%減、経常利益3.0%増、四半期純利益5.1%増の減収、最終増益。オフィスビル中心の不動産賃貸事業の営業利益は13%増。オフィス需要の回復が追い風で、空室率は低下し既存テナントの賃料の引き上げも進んだ。東京都心の「住友不動産平河町ビル」など新規完成のビルでは順調にテナントを集めている。営業収益、営業利益の減は、マンションなど分譲物件の引き渡しが下期にやや偏ったためで、不動産販売事業は23%の営業減益だった。金利低下による利払い負担の軽減が効いて経常利益は増益になった。

 東急不動産HD<3289>は売上高0.5%減、営業利益25.6%増、経常利益33.0%増、四半期純利益44.4%増の減収、2ケタ増益。減収の要因は国内の「都市事業セグメント」で投資家向けの物件売却益が減少したこと。オフィスビルの賃貸事業は企業の旺盛な需要を背景に空室率が低下し賃料も強含んでいる。経費の抑制や海外事業の収益改善も寄与して大幅増益になった。

 野村不動産HD<3231>は売上高10.3%減、営業利益16.9%減、経常利益23.1%減、四半期純利益25.8%増の2ケタ減収減益。その要因は住宅販売の比率が高く、マンションの引き渡し戸数が減った影響が大きく出たことだった。

 ■通期見通しは手堅く達成できる見込み

 2016年3月期の通期業績見通しは、三井不動産は売上高5.3%増、営業利益4.8%増、経常利益4.7%増、当期純利益6.8%増、予想年間配当は28円で修正はなかった。4~6月期の最終利益の通期業績見通しに対する進捗率は33.1%だった。賃貸事業の商業施設もオフィスビルも、分譲事業の個人向けも投資家向けも好調で、佐藤雅敏取締役は「利益の進捗は例年よりいい」と話している。

 三菱地所は営業収益10.4%減、営業利益13.6%減、経常利益15.1%減、当期純利益4.6%減の通期業績見通しも、14円の予想年間配当も修正はなかった。4~6月期の最終利益の通期業績見通しに対する進捗率は33.2%だった。丸の内地区の再開発でビルの閉鎖が進み、大型物件の引き渡しが多かった前期の反動も見込まれるが、山岸正紀執行役員は進捗状況について「各事業とも順調で、通期目標の達成に向けて着実に進んでいる」と話している。

 住友不動産は営業収益5.4%増、営業利益4.9%増、経常利益5.7%増、当期純利益9.2%増の通期業績見通しも、22円の予想年間配当も修正はなかった。4~6月期の最終利益の通期業績見通しに対する進捗率は26.9%だった。マンションなど不動産販売事業は物件引き渡しが今期は下期にやや集中しているので、4~6月期、減収減益だった営業収益、営業利益は今後、持ち直して増収増益に変わる見通し。

 東急不動産HDは売上高0.9%増、営業利益2.7%増、経常利益0.6%増、当期純利益5.0%増の通期業績見通しも、11円の予想年間配当も修正はなかった。4~6月期の最終利益の通期業績見通しに対する進捗率は19.8%だった。海外事業など「次世代・関連事業セグメント」はプロジェクトが本格稼働して通期の営業利益は赤字から25億円の黒字に転換する見通しで、それが全体の営業利益が最高益を更新する原動力になる。

 野村不動産HDは売上高3.1%増、営業利益1.5%増、経常利益0.5%増、当期純利益1.1%減の通期業績見通しも、50円の予想年間配当も修正はなかった。4~6月期の最終利益の通期業績見通しに対する進捗率は11.7%だった。7月30日にスポーツクラブを運営するメガロスを株式交換で完全子会社化し、収益源の多角化を図る。前期、法人減税に伴う繰り延べ税金負債の取り崩しで会計上の税負担が減少して最終利益は過去最高を記録したが、今期はその特殊要因がなくなる反動が出る見通し。(編集担当:寺尾淳)