【今週の展望】マッチ1本のような好材料でも火がつきやすい

2015年08月23日 20:33

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国内の経済指標は28日の取引時間前に、月末の金曜日恒例の国内経済指標の発表ラッシュ。4本の指標はどれも重要。

 日足一目均衡表の「雲」は21日時点で19948~20033円で、一足先に秋の空になったかのように513円も高い上空にぽっかり浮かんでいる。この雲は今週、24日と25日の間で今月2回目の「ねじれ」を演じる。24日の雲の厚みは25円と極薄だが、26~28日は下限は20033円そのままに上限は20159円から20207円に伸び、雲が次第に厚くなっていく。21日の終値は雲の下なので雲それ自体は上値抵抗線として機能するが、今週前半、その厚さが極薄でしかもねじれるというのは、旧約聖書の「出エジプト」のように海が左右二つに割れて通り道ができるようなもの。雲を突き抜けて「その上の世界」に戻るにはチャンスになるが、あまりにも遠い。

 では、日経平均はアベノミクスで営々と築いてきた「約束の地」に回帰できるのだろうか? それとも翼を失って墜落したイカロスは再び、雲の下の薄暗いラビリンス(迷宮)をみじめにさまよう運命なのだろうか?

 テクニカル分析のオシレーター系指標には、今週の上昇のシグナルを灯しているものが複数ある。その中でもストキャスティクス(9日・Fast /%D)は0.15で、売られすぎの目安の30を大きく割り込む「大いなる売られすぎ」。RCI(順位相関指数)も-84.6で売られすぎの目安の-50を割り込んだ。日経平均が2万円レベルになるとプラスマイナス5%超えが出現しにくくなる25日移動平均乖離率も21日は-5.5%で、-5%の「売られすぎライン」を超えていた。その他の指標は、RSI(相対力指数)は25.8、騰落レシオは81.0、サイコロジカルラインは5勝7敗で41.7、ボリュームレシオは43.0で、いずれも売られすぎラインに近い低位にある。

 ということは、「落ちるとこまで落ちました。これから先は上がるだけ」で、今週は自律反発を期待していいのだろうか?

 需給のデータも確認しておくと、14日時点の裁定買い残は2.9兆円で6月26日以来の高水準で、信用買い残は3.4兆円でこれも高水準。貸借倍率は4.89だった。東証が発表した10~14日の週の投資主体別株式売買動向は、外国人投資家の3179億円の大幅売り越しに対し個人投資家は808億円の買い越し。海外の機関投資家による指数先物プレイの盛り上がりを軸に個人の信用売買も加わった活気ある状況で、それが前週、1083円安のリスクオフにより、ハードランディング気味に急速に収束したと考えられる。

 それでもカラ売り比率は高水準で、前々週の12日は史上最高の39.3%で14日は38.0%だったが、前週も20日が39.1%、21日が38.8%と、週後半は再び史上最高に近い水準に高まっていた。「上昇してカラ売りの買い戻しが入り(通常のショートカバー)、それを見て機関投資家が売りポジションの解消を急ぐこと(踏み上げ)でドライブがかかって急上昇」というシナリオは、前週は中国発の世界同時株安という外部要因にもろくも崩されてしまったが、麻雀で言えば「リーチ」は依然としてかかっている。今週、上昇してツモれば、裏ドラがついて数え役満のような急騰もありうる。先物売りで東京市場を荒らし回った海の向こうの対面をハコにして、仕返しできるか?

 今週の自律反発以外の上昇のきっかけは、一つは経済指標や要人発言によるNY市場の反発、一つは為替の円安、一つは政策要因だろうか。前週末と様変わりして売られすぎの安値圏にあるので、マッチ1本のような小さな好材料でも火がつきやすい。その戻りのメドとしては、やはり今週末までに2万円の大台を回復し、日足一目均衡表の「雲」までたどり着けるか。それでも週間で500円を超える上昇になる。一方、下値は21日終値がテクニカルの限界点に近いので、それより下は短い時間のうちに自律反発だけで元に戻れるゾーンとみる。21日のCME先物清算値は200日移動平均を割り込む18970円だったが、現物指数の裏付けがない異常値なので気にすることはない。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは19400~20000円とみる。

 18日に発表されたムーディーズの世界経済見通しは、真っ先にチャイナリスクに言及していた。それを反映するかのように前週の上海総合指数は-6.14%の大幅下落の日も含めて週間騰落-11.54%で、日経平均の-5.28%をはるかに凌駕し、地球全体にリスクオフのムードをまき散らした。上海市場は冒険的、刹那的な投資行動、ご都合主義的なルール、時代遅れとも思える金融政策、さらに中国共産党内部の権力闘争までからんで、奇妙にして難解なマーケットになっている。

 それに向き合うには、テクニカル分析や行動ファイナンスの法則性や経験則の中に答えを探そうとするよりも、事実をありのままに、じっくり観察することが必要なのではないか。そして、対処のしかたを自分自身で考え、答えを見出せるか、投資家はその器量を試されている。「評価や批判をせずに観察することは、人間の知性のもっとも崇高な形である」(ジッドゥ・クリシュナムルティ)(編集担当:寺尾淳)