首相官邸や善光寺に墜落したことで、皮肉にも知名度が増してしまった小型の無人航空機「ドローン」。安全面に慎重な日本社会においては、その危険性がばかりがクローズアップされ、警戒心が強くなってしまっているが、世界の市場に目を向けると、ドローンは確実に、そして爆発的に普及し始めている。米国際無人機協会AUVSI(Association for Unmanned Vehicle Systems International)が2013年に発表した予測では、米国内のドローン市場規模は2025年までに820億ドルにも達することが見込まれており、大きなマーケットとして期待が高まっている。
ドローンはもともと、軍事目的で開発された自律移動する端末ロボットだ。その中でもとくに遠隔操作やコンピュータ制御によって飛行する小型の無人航空機(UAV)のことを指す。米軍ではすでに偵察用途での運用が始まっており、近年では商業撮影などの商業利用や、民間利用にも幅広く展開している。大きさや形状も様々で、手のひらに乗るような超小型のものから、全幅30メートルを超える超巨大なものまで存在している。
日本国内でも、農林水産業での活用をはじめ、火山などをはじめとする危険地域や山岳部、海洋地域などの計測や観測、危険区域の点検や作業、巡視、また各種撮影や物流など、様々な用途での導入が始まっている。
例えば、電気メーカー大手のソニー<6758>も、同社の子会社であるソニーモバイルコミュニケーションズと、車の自動運転技術を手がけるベンチャー企業のZMPとの共同出資で新会社エアロセンスを設立し、2016年度からドローン事業に参入することを発表している。新会社では、ソニーがこれまでに培ってきたカメラや通信技術、さらにはZMPが得意とする自動運転のプログラム技術を生かして、高精細な画像を撮るドローンを開発し、建築現場などの測量や、災害現場などの撮影、橋梁などの点検などをする事業にサービスを提供するという。
また、建設機械で日本シェア1位、世界シェア2位を誇る小松製作所<6301>も、すでに建設現場での測量などにドローンの導入を始めており、3Dレーザースキャナや無人建機などの最新システムと組み合わせて、人員不足など建設現場の様々な課題を解消する、同社が次世代を担う事業として進める建設現場向けのICTソリューション「スマートコンストラクション」を加速させている。
そして、直接的な事業展開もさることながら、ドローンの世界的な普及とともに注目と期待を集めているのが、日本の技術力だ。電子部品大手のローム<6963>が6月に発表した業界最高精度で方位を検出するMIセンサ等の様々なセンシング技術や、消費電力を最小限に抑える低消費電力技術、さらには近距離無線通信技術など、ドローンの普及とともにこれらの技術の需要も高まるのは間違いないだろう。
現在、ドローン普及の最大の課題となっているのが、安全性の問題だ。たとえ手のひらサイズのドローンでも、高度から落下してきたら大事故になる。ライセンスなどの法整備や安全管理など、クリアしなければならない問題は山積しているが、それでもドローンの可能性には、大きな期待を寄せずにはいられない。日本の技術力がドローンの安全性と信頼性を高めることができれば、世界の市場で自動車産業に匹敵する分野に成長するかもしれない。(編集担当:藤原伊織)