安保法案と共に今国会での最重要法案のひとつとして政府が位置付ける労働者派遣法の改正案。9日の参院本会議で自民、公明、次世代などの賛成多数で可決し、衆院に送られたが、本会議では、賛成、反対ともに討論者が熱弁になった。
反対討論では日本共産党の小池晃議員は「これほどあからさまに企業側の要求に応える法案を、わたしはかつて見たことがない。この法案は派遣労働者保護法でなく、派遣企業保護法であることを露骨に示すもの」と断言して、廃案しかないと訴えた。
民主党の石橋通宏議員は「派遣制度のあるべき姿を根底から覆す大改悪であり、断固反対。労働者の犠牲の上に我が国の発展はない」と訴えた。
また石橋議員は「準備と周知時間を考えれば(9月30日の)円滑な施行は不可能」と指摘。「かつて、ここまで労働者を救済直前に裏切って、ブラック企業を救済する悪法があったか。与党自ら修正案を出さざるを得ず、39項目に及ぶ付帯決議が採択されたことからも、この法案が欠陥だらけということだ」と真っ向から廃案にすべきと主張した。
加えて、法案の問題点について(1)派遣の期間制限を事実上撤廃する。(2)派遣の自由化に道を開き、正社員から派遣への置き換え、派遣の固定化を招く。(3)業界による業界利益のための法案で、雇用安定化措置は抜け穴だらけ。法案には派遣の正社員化などどこにも法定されていない。(4)法案では派遣労働者の賃金アップ、処遇改善も実現されない(5)派遣労働者の権利強化の条文はどこにもないとした。
一方、自民と公明を代表して、賛成討論を行った自民党の福岡資麿議員は「労働者派遣制度は働く人にとって自由度が高く、柔軟な働き方を可能にする制度だ」とし「派遣先企業にとって専門性にある労働者を臨機応変に活用できる長所がある」とした。
福岡議員は「労働力の需給調整に大きな役割を果たしている」とまさに経営サイドでのメリットの大きさを浮き彫りにした。
福岡議員は「派遣労働者の保護、雇用の安定強化が目的」と改正の目的が派遣労働者の視点にあるとし「法案は派遣労働者の待遇改善に資するもの。個人単位で3年という派遣期間制限を設けたうえで、上限に達した派遣社員が希望した場合には派遣先企業への直接雇用を依頼、新たな就業機会の提供、派遣会社自身での無期雇用など雇用継続のための措置が派遣会社に義務付けられ、義務違反の派遣会社には許可取り消しなどの措置もとられる」と主張。
また「派遣先企業従業員との均等待遇に考慮し、賃金を決定し、福利厚生を実施する配慮義務がすでに課されているが、今回の法案では、考慮した内容を派遣社員の求めに応じて説明する義務が課される。均等を考慮する配慮義務がこれまで以上にはたされることが期待される」。
「派遣社員のキャリアアップの為、派遣会社に計画的教育訓練や希望者にキャリアコンサルティングを行う義務が課される」などとした。しかし、派遣先企業が社員に行う教育訓練や社員食堂などの使用に対しては配慮義務にとどまるなど企業裁量でどうにでもなる規定になっている。(編集担当:森高龍二)