ゴールドウイン、人工合成クモ糸素材「Spiber」と提携

2015年09月19日 19:10

画・ゴールドウイン、人工合成クモ糸素材「Spiber」と提携

ゴールドウインは9月8日、新世代高機能素材として期待される人工合成クモ糸素材の開発に成功したベンチャー企業「Spiber」と提携すると発表した。同社は、Spiberに対して30億円を出資し、スポーツアパレル分野の製品開発を共同で進める。

 ゴールドウイン〈8111〉は9月8日、新世代高機能素材として期待される人工合成クモ糸素材の開発に成功したベンチャー企業「Spiber」と提携すると発表した。同社は、Spiberに対して30億円を出資し、スポーツアパレル分野の製品開発を共同で進める。

 Spiber社長の関山和秀氏は2002年から山形県鶴岡市にある慶應義塾大学先端生命科学研究所を拠点に研究活動に携わり、04年9月からクモ人工合成の研究を開始。博士課程在学中の07年にSpiberを設立した。同社の人工合成クモ糸素材「QMONOS」(クモノス)は、強靭で伸縮性に優れているだけではなく、枯渇資源に依存しないバイオマス由来であることから、環境性と持続可能性をあわせ持つ新世代素材として注目されている。

 QMONOSの開発は、クモの命綱である牽引糸が、鋼鉄を上回る強度と、ナイロンを上回る伸縮性をあわせ持つタフな繊維であることに着目したことからスタートした。

 直径1センチメートルのクモ糸で巣を張れば、ジャンボジェットを捕えることができるとさえ言われている。その強靭さは、防弾チョッキに使用されるアラミド繊維の7倍ともいう。

 ただし、クモはカイコとは異なり肉食で、縄張り意識の強い虫であるため、家畜化して繊維を生産させることができない。そこで、1990年頃から遺伝子工学技術を駆使した生産技術の開発が開始されていた。

 QMONOSは、最先端の微生物発酵プロセスにより生成されたタンパク質(フィブロイン)を特殊な紡糸技術により繊維化することで生産される。

 Spiberは内閣府創設の「革新的研究開発プログラム」の「超高機能構造タンパク質による素材産業革命」のプロジェクトにコア研究機関として指名選定されている。

 QMONOSは、アパレル素材にとどまらず、「衝突してもケガをしない車」や、「微細な血管や神経でも縫える手術の糸」など、これまでの常識を覆すような製品開発に発展する可能性を秘めている。(編集担当:久保田雄城)