三菱「MRJ」が今月初飛行へ 日本航空機産業発展の切り札となり得るのか

2015年10月07日 07:23

画・三菱「MRJ」が今月初飛行へ 日本航空機産業発展の切り札となり得るのか

国産初のジェット旅客機「MRJ」の初飛行を10月26日から30日の期間内に実施すると発表した。初飛行後は日米で2,500時間に上る飛行試験を繰り返して安全性を確認し、2017年4~6月期の初納入を目指すという。

 三菱航空機が開発中の国産ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」は、飛行試験機初号機による初飛行を今月中に実施する運びとなった。プロペラ機「YS-11」以来、ほぼ半世紀ぶりのこの国産旅客機は果たして、日本航空機産業発展の切り札となり得るのか。その可能性を探ってみる。

 三菱重工業<7011>と三菱航空機は9月30日、国産初のジェット旅客機「MRJ」の初飛行を10月26日から30日の期間内に実施すると発表した。初飛行後は日米で2,500時間に上る飛行試験を繰り返して安全性を確認し、2017年4~6月期の初納入を目指すという。今後20年での販売目標は5,190機と言われ、一機当たりの価格は50億円内外とみられる。

 MRJは2015年7月現在、407機の受注を得ており、1962年に初飛行した戦後初の国産旅客機、日本航空機製造YS-11の総生産数182機をすでに上回っている。国内大手の日本航空や全日空に加え、米国のリージョナル路線大手であるスカイウェスト航空やイースタン航空などからも確定発注を獲得している。

 三菱重工業の航空機ビジネスは、その売上高は直近で年間2,000億円程度と言われ、連結売上高(3.9兆円)に占める比率はまだまだ低く、基幹事業にはなり得ていない。そこにMRJの完成機ビジネスが加わることで、民間航空機事業の規模は大きく成長し、事業の柱になる可能性がある。

 旅客機としての性能は抜群と言われ、今後はMRJプログラムに対する航空会社からの信頼度が高まり、受注にも弾みがつく見通し。最大のライバルはエンブラエル(ブラジル)だ。

 しかし、今はやっと技術力で世界水準に達した段階であり、ブランド力はあまりにも乏しい。このため、MRJによる世界シェアの拡大は、日本航空機産業発展の新たな礎ともなるが、道のりは険しいと言わざるを得ない。

 世界の航空機産業の市場規模は年60兆円超で、このうち、国内航空機産業のそれは約1.1兆円。シェアはまだ2%にも満たない。経済産業省は2020年に2兆円規模へ拡大と予想しており、日本航空機産業の市場規模としては納得できなくもないが、GDP600兆円を目指す(安倍首相)日本経済を考えると、ハードルは低い。

 2017年以降、MRJが国内を飛行するようになれば、国内の新たな空港建設という地方経済にとって願ってもない波及効果が現れる可能性もある。MRJの世界デビューは、日本航空機産業のみならず、日本経済の発展をも予感させる出来事であり、その期待値は年々高まっている。日本航空機産業に新たな時代が到来した。(編集担当:久保田雄城)