積水ハウスが出力制御対応の蓄電システムを導入。日本の再生可能エネルギーが歩むべき未来

2015年05月16日 19:51

 節電の夏がやってくる。6月より、昨年に続き2度目となる電気料金値上げを行う関西電力など、各電力会社の値上げも予定されている。今年は再生可能エネルギーの活用スタイルが、大きく変わりそうだ。資源エネルギー庁は今年1月に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度を定めた特別措置法」の一部を改正し、発電設備に対する出力制御ルールを大幅に変更した。さらに4月からは、東京・中部・関西の各電力会社を除いて、一般住宅用の太陽光発電も出力制御の対象が制度上は可能となった。近年の太陽光発電設備の急速な普及は、良くも悪くも固定価格買取制度の影響が大きい。それだけに4月の法改正による今後が注目されている。

 そもそも太陽光などの再生可能エネルギーの普及目的は売電収入ではない。再生可能エネルギーは化石燃料に依存しないエネルギーであり、且つ発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスをほとんど排出しないクリーンなエネルギーだということが、普及の最大の目的だ。売電は、そのための手段でしかない。とくに、我が国におけるエネルギー供給の8割以上を占めるといわれる化石燃料は、そのほとんどを海外からの輸入に頼っている中、再生可能エネルギーの普及は国家的急務といえるだろう。とはいえ、売電収入が減れば、これまでの勢いは失速してしまうのではないだろうか。

 これを受け、住宅メーカー最大手の積水ハウス<1928>は先般、住宅メーカーとしては初めて、戸建住宅での出力制御対応型蓄電池システムを搭載した「グリーンファースト 蓄電スタイル」を発売した。「グリーンファースト 蓄電スタイル」は、出力制御時には自動で太陽光発電の余剰電力を蓄電し無駄なく利用できるほか、平常時ももちろん、安価な深夜電力を蓄電し電気料金が高い時間帯に使用することで光熱費を削減することができる。さらに災害などによる停電時には、自動制御で蓄電していた電力が使用できるので安心だ。また、将来の電力価格の上昇などに対しても、売電と蓄電を組合せて柔軟に対応できるという。

 このシステムは太陽光発電と蓄電池一体型のパワーコンディショナーを用いている。太陽光発電を採用する住宅において、蓄電システムを追加する差額97.6万円に補助金を差引くと58万円より導入できることになる。これにより、政府が2020年までの標準化を目指すネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)に対応する同社の「グリーンファースト ゼロ」の普及を後押しする。太陽光発電などで発電し、蓄電池で賢く使う。再生可能エネルギーの発電が出力制御されても、蓄電を上手に使うことで創りだしたエネルギーを無駄なく利用できる。さらに、住宅のエネルギー源の切り替えが外部からの制御に対応できるという技術の実現は、スマートグリットへ向けた第一歩ともいえる。

 経済産業省の蓄電池戦略プロジェクトチームでは、世界の蓄電池市場の規模は2020年には20兆円に達すると見込んでいる。政府は今後の日本の成長を支える重要産業と位置づけ、世界の蓄電池シェアの5割を日本の企業が獲得することを目標に掲げ、今年の蓄電池補助金制度では130億円規模の総予算を設けるなど、国家レベルで蓄電池産業の発展を後押しする姿勢を見せている。また、エネルギー輸入大国の日本が再生可能エネルギー大国に生まれ変わり、さらに世界市場でも、培った環境技術を強みとすることができれば、日本経済や日本国民の生活の未来は明るくなるだろう。(編集担当:藤原伊織)