信用倍率は10月16日の5.22から23日には4.84まで低下したが、10月23日の裁定買い残は1638億円増の2兆4182億円で4週連続で上昇していた。カラ売り比率は前週、10月26日は33.7%と低かったが、27日は37.7%、28日は37.5%、29日は41.0%と上昇。しかし30日は34.9%まで低下し、やはり30日後場の急騰時に信用の売りポジションを投げる「カラ売りの踏み上げ」があった証拠を示している。
総じて言えば、テクニカル指標はトレンド系は「上値限定」、オシレーター系は「買われすぎ警戒」で、需給は「買い勢力と売り勢力が均衡しながら信用売りポジション低下」というところか。10月30日のCME先物が19000円を割り込んだこと、6日のアメリカ雇用統計の結果待ちの様子見が出ること、4日の〃スーパールーキー〃郵政3社の新規上場に投資家の関心も市場の買いのエネルギーも吸い取られること、前週のFOMCや日銀会合のような結果次第で状況が激変するようなイベントも見当たらないことなどを考え合わせると、終値で19500円に接近するような局面は考えにくい。たとえ安倍内閣から補正予算案の具体的な政策が出てきてマーケットの期待が盛り上がったとしても、である。
今週の上値は、ボリンジャーバンドの25日線+2σの19257円か、200日移動平均の19210円あたりが限界か。それでも200日線を超えれば、5日、25日、75日、200日の4本の移動平均線を全て上回ることになる。これは8月18日以来、約2ヵ月半ぶり。その頃は完全に「2万円台ワールド」にいたから、移動平均線や日足一目均衡表の雲やボリンジャーバンドとの相対的な位置関係で言えば、8月下旬の暴落前の状態に戻れることになる。
一方、今週は19000円台をあっさり割り込んでさらに下値を探る日が1日か2日はあるだろう。その理由は前週同様に「過熱感」で説明される。「17000~18000円台ワールド」から離れることはできず、淡々と過熱感を処理する週になりそうだ。とは言っても18228円の25日移動平均線まで下がっては下がりすぎで、「雲」の中にとどまりながらボリンジャーバンドの+1σの18742円付近で下げ止まるだろうと考える。4~9月期決算発表たけなわの企業業績はおおむね堅調で、株価指数を押し下げそうな売り材料も見当たらない。裁定業者が指数プレイで暗躍するSQ週は来週だ。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは18750~19250円とみる。次に2万円に接近できるチャンスは、波乱含みの鬼のSQ週、11月第2週をやり過ごして、決算発表もほぼ終わった後の第3週になるだろう。その週は18、19日に日銀会合もある。
人類の歴史から日常生活のささいな出来事に至るまで、物事は段階を踏んで連続的に、一直線に進むようなことはめったになく、行きつ戻りつ、らせん状のパターンを描いて進んでいくことがほとんど。新しいものが突然、前後の脈絡なしに現れて影響を及ぼすこともある。投資家心理も一つの方向に簡単に付和雷同するとは限らない。日銀会合の結果を受けて失望売りの嵐になるかと思いきや、同時に現れた別の好材料にあっさり乗り換えて大幅上昇を演じた10月30日後場の出来事は、マーケット心理に潜む二面性を垣間見せてくれた。それはコンピュータにはわからないことだろう。「どんな人間にも、どんな時にも、二つの要求が同時に存在する。一つは神へ向かい、一つはサタンへ向かう」(シャルル・ボードレール)(編集担当:寺尾淳)