【自動車部品業界の4~9月期決算】北米向けが好調で上半期は軒並み最終増益。しかし下半期の見方は強気と弱気で真っ二つ

2015年11月05日 08:16

 11月4日、自動車部品大手7社の4~9月期(第2四半期/中間期)決算が出揃った。連結売上高が約1兆円を超える最大手クラス(一次部品メーカー)のメイン事業はエンジン、電装品、自動変速機、ブレーキ、パワステ、計器、シート、エアコン、車体組立などさまざまだが、共通しているのは完成車メーカーと業績がほぼ連動していること。日本精工(独立系)とカルソニックカンセイ(日産系)を除くトヨタ系の5社の動きは、トヨタの世界戦略に組み込まれている。

 4~9月期の最終利益は大手7社全て増益だが、前期比ではデンソーの+0.9%からトヨタ紡織の約2倍までまちまち。通期見通しは下半期の中国や新興国の経済の不透明感を反映したかのように、豊田自動織機、トヨタ紡織、ジェイテクト、カルソニックカンセイが上方修正する一方、アイシン精機と日本精工が下方修正するなど真っ二つに分かれている。デンソーは売上を上方修正しながら利益は下方修正した。

 「日本車の優秀さの源泉は、優秀な部品メーカーの存在と、それとのきずなの強さ」と称賛されることも多いが、それでもエアバッグの欠陥で全世界的なリコール問題を起こしたタカタ<7312>(独立系)のように、厳しい事業リスクも負っている。近年、完成車メーカーは部品調達コストの削減を目的に系列取引の見直しを行っており、二次、三次以下の部品メーカーでは「部品メーカーの選別」の動きに戦々恐々としている企業や、仕事はあっても現場の人手不足、管理職の人材不足、トップの後継者難に悩まされている企業がある。業績好調の自動車部品最大手とはまた別の世界が、そこにはある。

 ■全社が北米の快調を業績好調の理由に挙げる

 4~9月期の実績は、デンソー<6902>は売上収益7.6%増、営業利益1.2%減、税引前利益0.9%減、四半期利益微減、最終四半期利益0.9%増の増収、最終増益。中間配当は前年同期比13円増の60円とした。北米市場ではフォード向けなどが伸びて8%の増収。円安が280億円の増益要因になり、研究開発や生産能力増強のコストを吸収した。

 アイシン精機<7259>は売上高8.7%増、営業利益4.3%増、経常利益4.2%減、四半期純利益3.3%増の増収、最終増益。中間配当は前年同期比5円増の50円とした。上半期は自動変速機やエンジン関連部品が北米や中国で好調に推移した。最終利益は当初4.5%減を見込んでいたが、堅調な販売と税負担の軽減で増益に転じた。

 豊田自動織機<6201>は売上高5.2%増、営業利益17.9%増、経常利益14.4%増、四半期純利益11.5%増の増収増益。中間配当は当初予想より5円多い前年同期比10円増の60円とした。エンジンや車体組立は低調だがカーエアコン用部品は好調。北米、ヨーロッパでフォークリフトの販売が伸び、収益に貢献した。

 トヨタ紡織<3116>は売上高10.8%増、営業利益90.7%増、経常利益58.6%増、四半期純利益102.6%増(約2倍)の大幅増収増益。中間配当は当初予想より5円多い前年同期比6円増の15円とした。北米での生産は「ハイランダー」などトヨタ車向けを中心に高水準で、アジアの生産も回復をみせる。

 ジェイテクト<6473>は売上高7.1%増、営業利益20.9%増、経常利益19.4%増、四半期純利益27.6%増の増収、2ケタ増益。中間配当は当初予想より4円多い前年同期比7円増の21円とした。4~9月期としては過去最高益を更新。日本車の販売が好調な北米市場でステアリングやベアリングが出荷を伸ばした。国内では工作機械が伸びている。

 日本精工(NSK)<6471>は売上高5.5%増、営業利益21.3%増、経常利益19.8%増、四半期純利益29.2%増の増収、2ケタ増益。4~9月期では2年連続の営業最高益。中間配当は前年同期比5円増の17円とした。北米向けのベアリングの販売が伸びた。

 カルソニックカンセイ<7248>は売上高11.3%増、営業利益44.6%増、経常利益55.7%増、四半期純利益33.0%増の2ケタ増収増益。中間配当は前年同期比1.25円増の5円とした。主要取引先の日産<7201>が北米で販売を大きく伸ばしたのに連動して部品受注が大きく伸び、日産が年間販売台数の見通しを引き下げた中国での減速分をカバーした。

 ■通期見通しは上方修正と下方修正が混在

 2016年3月期の通期業績見通しは、デンソー<6902>は売上収益を500億円上積みして4.9%増に上方修正、営業利益を300億円減らして5.6%増に下方修正、税引前利益を310億円減らして3.0%増に下方修正、当期利益を200億円減らして0.6%増に下方修正した。それでも増収増益は維持。予想期末配当は前期比3円減の60円、予想年間配当は前期比10円増の120円で修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は43.4%だった。中国、ASEAN諸国の自動車市場の減速を見込んでいる。

 アイシン精機<7259>は通期業績見通しを、売上高は500億円減らし9.6%増から7.9%増に、営業利益は250億円減らし20.4%増から5.4%増に、経常利益は250億円減らし14.1%増から0.9%増に、当期純利益は60億円減らし28.9%増から21.2%増に、それぞれ下方修正した。それでも増収増益の見込み。予想期末配当は前期と同じ50円、予想年間配当は前期比5円増の100円で修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は40.2%だった。中国で自動変速機の下振れを見込むなど、アジアの自動車市場での需要の減速を見込んでいる。

 豊田自動織機<6201>の通期業績見通しは、売上高は300億円上積みして1.5%増から2.9%増に、営業利益は50億円上積みして6.3%増から10.6%増に、経常利益は30億円上積みして7.7%増から9.5%増に、当期純利益は610億円上積みして9.3%増から62.2%増に、それぞれ上方修正した。上方修正は今期2度目。予想期末配当は当初予想より5円多い前期比10円増の60円、予想年間配当は当初予想より10円多い前期比10円増の120円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は36.3%だが、産業車両、自動車関連のコア事業への「選択と集中」を進めるために、12月に機械警備と情報資産管理の連結子会社2社を売却する予定で、特別利益の計上を見込んで通期の最終利益見通しを610億円も上方修正している。

 トヨタ紡織<3116>の通期業績見通しは、売上高は700億円上積みして0.4%減から4.9%増に、営業利益は110億円上積みして17.3%増から51.3%増に、経常利益は120億円上積みして2.7%減から26.5%増に、当期純利益は110億円上積みして226.7%増(3.2倍)から438.0%増(5.3倍)に、それぞれ上方修正した。予想期末配当は当初予想より5円多い前期比6円増の15円、予想年間配当は当初予想より10円多い前期比12円増の30円に修正。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は63.2%だった。11月にアイシン精機、シロキ工業からの事業譲渡を受けてトヨタグループ内のシート部品事業が集約される。

 ジェイテクト<6473>の通期業績見通しは、売上高は400億円上積みして1.0%増から4.0%増に、営業利益は40億円上積みして5.2%増から10.6%増に、経常利益は50億円上積みして0.8%増から7.1%増に、当期純利益は40億円上積みして15.2%増から24.6%増に、それぞれ上方修正した。予想期末配当は当初予想より4円多い前期比1円増の21円、予想年間配当は当初予想より8円多い前期と同じ42円に修正している。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は53.5%だった。円安のメリットを受けて増益幅が拡大する見込み。ステアリング技術を活かした自動操舵システムを完全自動運転の実現に向けて開発している。

 日本精工<6471>の通期業績見通しは、売上高は400億円減らして4.6%増から0.5%増に、営業利益は80億円減らして4.8%増から3.4%減に、経常利益は80億円減らして9.9%増から1.1%増に、当期純利益は40億円減らして13.0%増から6.5%増に、それぞれ下方修正した。営業利益は増益から減益に転じ、最終利益も2ケタから1ケタに変わった。予想期末配当は前期比1円増の17円、予想年間配当は前期比6円増の34円で修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は50.6%だった。需要先が自動車の他に鉄道、工作機械、風力発電などもある中国向けのウェートが高いため、中国経済の減速を想定して通期見通しを保守的に見積もった。

 カルソニックカンセイ<7248>は通期業績見通しを、売上高は500億円上積みして3.6%増から8.7%増に、営業利益は30億円上積みして10.8%増から20.3%増に、経常利益は50億円上積みして16.7%増から34.4%増に、当期純利益は30億円上積みして9.4%増から24.3%増に、それぞれ上方修正した。予想期末配当は前期比1.25円増の5円、予想年間配当は前期比2.5円増の10円で修正なし。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は46.0%だった。上方修正の理由として、為替レートが円安に推移していること、落ち着いたガソリン価格を背景に北米で大型車の需要が拡大しモデルミックスが改善していること、昨年からグローバルで立ち上がった新型車種が順調に推移していることを挙げている。(編集担当:寺尾淳)