【総合商社の4~9月期決算】資源価格の市況低下は出口が見えず、非資源分野で資源分野を補いきれなくなってきた

2015年11月08日 10:09

 11月6日、総合商社6社の4~9月期決算が出揃った。原油、石炭、天然ガス、鉄鉱石、銅などの資源価格の市況低下はなおも続き、出口が見えない有り様。資源分野の業績悪化は目をおおうばかりで、機械や情報・メディア、生活関連、不動産など非資源分野でどんなに健闘しても補いきれなくなっている。それが最もはっきり現れたのが、最終利益が過去最高だった4~6月期から大幅な減益に激変した丸紅の決算だろう。丸紅だけでなく、非資源分野の比率が比較的高い住友商事や双日も通期の売上高の見通しを下方修正している。結果として伊藤忠商事の業績の良さが突出して、最終利益は4~9月期でも通期見通しでも、長年トップを占めてきた三菱商事を抜いて、大手商社6社中トップに躍り出た。

 ■資源分野は中国経済の変調に痛撃されさらに悪化

 2015年3月期の実績は、三井物産<8031>は売上高8.5%減、税引前利益27.9%減、四半期利益37.4%減、最終四半期利益(連結純利益)41.3%減の減収、2ケタ減益。中間配当は前年同期と同じ32円とした。原油、鉄鉱石など資源価格の下落が重く約1400億円の減益要因になっている。エネルギー部門は77%減益、金属資源部門は27%減益。生活産業部門でもブラジルで大規模農園を経営する子会社のマルチグレインが販売不振に陥り、減損損失を計上した。創薬などのベンチャー投資や化学品部門の北米の飼料添加物事業のような非資源分野が伸びても、為替の円安差益が出てもそれをカバーできず、4~6月期から減収減益幅が拡大した。

 三菱商事<8058>は収益5.2%減、税引前利益45.4%減、四半期利益35.9%減、最終四半期利益39.3%減の減収、大幅減益。中間配当は当初予想から3円減、前年同期から15円減の25円とした。原油、天然ガス、石炭などエネルギー資源や、鉄鉱石、銅など金属資源の市況低迷が業績を直撃した。その元凶は中国の景気減速で、内野州馬・最高財務責任者(CFO)は、「中国経済がここまで減速するとは認識できなかった」と述べている。生活産業や化学品などの事業が好調で非資源分野の利益は当初予想を上回ったが、資源分野の業績悪化をカバーできなかった。

 伊藤忠商事<8001>は収益7.4%減、営業利益10.9%減、税引前四半期利益16.2%増、四半期純利益38.9%増、最終四半期純利益39.8%増の減収、最終大幅増益。最終利益は4~9月期としては過去最高で、減益幅が大きかった三菱商事を上回った。中間配当は前期比2円増の25円とした。市況の低迷で原油や鉄鉱石など資源分野の業績は落ち込んだが、タイヤ、繊維、製紙用パルプ、生活資材など非資源分野が伸びた。最終利益には有価証券の売却益、再評価益、税負担の軽減なども寄与している。

 住友商事<8053>は売上高5.1%減、営業損益は前年同期の994億円の赤字から1083億円の黒字に、税引前損益は前年同期の306億円の赤字から1766億円の黒字に、四半期損益は前年同期の342億円の赤字から1369億円の黒字に、最終四半期損益は前年同期の384億円の赤字から1293億円の黒字に変わるという減収、損益黒字化の決算。中間配当は前年同期と同じ25円とした。前年同期に計上した北米のシェールオイル事業、オーストラリアの石炭事業に関連した1673億円の巨額の減損がなくなり黒字化。資源価格の低迷で北米の鋼管事業は低迷したが、SCSK<9719>が好調なIT関連、ジュピターテレコムが好調なケーブルテレビ、北米の建機レンタル、航空機リースなど非資源分野が業績を支えた。

 丸紅<8002>は売上高8.2%減、営業利益19.3%減、税引前利益31.2%減、四半期利益22.2%減、最終四半期利益22.3%減の減収、大幅減益。中間配当は前年同期比2.5円減の10.5円とした。メキシコ湾の油田・ガス田で減損損失を計上したため、最終利益は過去最高だった4~6月期から一転、大幅減益に変わった。エネルギー・金属分野の売上総利益は前年同期比53.0%減。比較的好調な情報関連や不動産など生活産業分野も売上総利益4.1%減では、全体の業績の悪化をカバーできなかった。

 双日<2768>は売上高3.7%増、営業利益12.5%減、税引前利益2.1%減、四半期利益15.2%増、最終四半期利益23.2%増の増収、2ケタ最終増益。中間配当は前年同期比1.5円増の4円だった。良かったのは環境・産業インフラ、航空産業・情報、リテール(不動産)、化学、自動車の分野。悪かったのはエネルギー、生活資材、食料・アグリビジネスの分野だった。

 ■住友商事は黒字化し、伊藤忠商事は最も好調

 2016年3月期の通期業績見通しは、三井物産は最終当期利益(連結純利益)だけ公表し21.7%減で、前期と同じ予想期末配当32円、予想年間配当64円とともに修正はなかった。4~9月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は54.4%。事業部門別の業績予想ではエネルギー部門、生活産業部門を下方修正し、化学品部門を上方修正している。

 三菱商事は最終当期利益(連結純利益)だけを公表し、3600億円から3000億円へ600億円減らし、前期比10.1%減から25.1%減に下方修正した。予想期末配当は当初予想から3円減で前期比5円減の25円、予想年間配当は当初予想から6円減で前期比20円減の50円に下方修正した。4~9月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は51.6%になった。資源分野では原油、天然ガスの市況低迷がなお続き、エネルギー事業で減損損失が発生する見通し。金属資源の市況も同様で、資源分野のセグメント利益を当初予想の870億円から200億円へ大幅に下方修正した。最終利益の下方修正分600億円のうち約3分の1は資源分野の減損分という。それでも市況は現状が底で、これ以上の業績の悪化はないとみている。

 伊藤忠商事は収益0.2%増、営業利益12.0%減、税引前利益3.0%減、当期純利益17.7%増、最終当期純利益9.8%増の通期業績見通しも、前期比2円増の予想期末配当25円、前期比4円増の予想年間配当50円も修正はなかった。4~9月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は64.4%と高水準。最終利益見通しは三菱商事が下方修正したため大手商社6社の中で初めてトップに立つ見通し。鉢村剛CFOは「下期も資源関連は厳しいが、年間計画は必ず達成できる手ごたえを持っている」と述べた。

 住友商事の通期業績見通しは、売上高を8兆6000億円から8兆円に6000億円下方修正し前期比6.9%減、黒字転換する税引前利益を2900億円から2950億円に50億円上方修正、同じく黒字転換する最終当期利益は2300億円で修正なし。予想期末配当は前期と同じ25円、予想年間配当は前期と同じ50円で修正していない。4~9月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は56.2%だった。猪原弘之副社長は「資源価格の低迷で厳しい事業環境が続く」と述べ、鋼管事業、資源ビジネスは引き続き厳しいが、メディア・生活関連、輸送機・建機の事業は堅調に推移できると想定し、最終利益予想は据え置いた。それでも足元の資源価格が軟調に推移しているため、市況商品の価格動向、事業計画の見直しなどで一部の案件で減損損失を計上する可能性があるという。

 丸紅<8002>は通期業績見通しを、売上高は1兆円減らして0.5%増から6.6%減に、営業利益は150億円減らして6.7%減から16.0%減に、税引前利益は200億円減らして100.6%増から84.6%増に下方修正し、当期利益68.5%増、最終当期利益70.4%増は修正しなかった。前期比2.5円減の予想期末配当10.5円、前期比5円減の予想年間配当21円は修正していない。4~9月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は56.2%だった。売上高と営業利益を下方修正したが、松村之彦CFOは「各事業とも、ある程度保守的に見積もっている」と述べている。強みがあるという電力、化学品(ヘレナケミカル)、食料、輸送機での伸びで、どれだけ挽回できるか。

 双日は通期業績見通しの売上高を1500億円減らして7.2%増から3.5%増に下方修正。営業利益20.7%増、税引前利益11.3%増、最終当期利益20.9%増の見通しは修正していない。前期比0.5円増の予想期末配当4円、前期比2円増の予想年間配当8円は修正なし。4~9月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は51.5%だった。国内販売用不動産取引が好調なリテール事業は堅調でも、石炭・金属分野の石炭価格、エネルギー分野の石油価格など商品市況が低迷する影響を見込んで売上高を下方修正した。利益面では販管費のコスト削減が当初の想定より進むとみて、業績見通しを据え置いている。(編集担当:寺尾淳)