株価の中の「記号消費」的な価値の部分が膨脹すれば「バブル」と呼ばれ、縮小すれば「バブル崩壊」と呼ばれるが、それが全くなくなってしまったら、市場関係者のほとんどは生計が成り立たなくなるはずだ。株式市場とは今も昔も、売り方も買い方も、本来の実用的価値にそれ以外の価値をどれだけ上乗せして自分の望みの株価を形成できるかをめぐって、あらゆる手練手管を駆使する「果てしなき生存競争」を宿命づけられた世界だ。
その望みの株価だが、前週については「日経平均の2万円早期回復」を望む海外機関投資家の勢力がいて、その意志が働いていたかのようなチャートパターンがみられた。始値がマイナスで終値がプラスになる「逆転勝ち」がそれで、10日から12日まで3日も続いた。その間の終値はプラスでも28円高、20円高、6円高という小幅で、マイナスで終わり3日続落してもおかしくなかった。それを逆転勝ちの連勝に持ち込めるところに、東京市場に「地力」の強さが戻ったことがうかがえる。
また、チャートでは5日から13日まで7営業日連続の陽線(白いローソク足)で、始値よりも終値のほうが高い。それは、朝に利食いされてもその後に買い支えが入ったことを意味し、買い意欲の旺盛さの証し。上海市場の値動きに影響される「中日連動」も、前週はその連動性がやや薄れていた。
とはいえ、7連騰中はテクニカル分析のオシレーター系指標で「買われすぎ」シグナルが派手につきっぱなしで、100円下落した13日終値時点でも状況はあまり変わっていない。騰落レシオは121.0で買われすぎ基準の120をオーバー、ストキャスティクス(9日Fast/%D)は94.2で買われすぎ基準の70をオーバー、ボリュームレシオは79.8で買われすぎ基準の70をオーバー、サイコロジカルラインは10勝2敗の83.3%で買われすぎ基準の75%をオーバー、RCI(順位相関指数)は+85.3で買われすぎ基準の+50をオーバー、という具合。25日移動平均乖離率は+4.0%で買われすぎ基準が+5%ならそれより下だが、+4%なら基準線上。買われすぎ基準にかすっていないのは68.3のRSI(相対力指数)ぐらいだった。13日に上昇が止まっても、12日までの7連騰で生じた「買われすぎ」シグナルの興奮状態は、いまだクールダウンしていない。
13日の日経平均終値19596.91円のテクニカル・ポジションを確認すると、移動平均線は19660円の5日線だけが上で、19311円の200日線、18953円の75日線、18807円の25日線は下にある。日足一目均衡表の「雲」は17843~18924円に位置する。今週は雲の上限は18924円で固定され、下限は17754円から17912円まで少しずつ上昇する。厚さは1000円前後あるが、前々週に上に抜けた雲は672円も下になったので、その影響は軽微だろう。
ボリンジャーバンドでは19360円の25日線+1σと19912円の+2σの間に位置し、+3σは20465円、-1σは18254円にある。25日線が上昇したため、+2σが前々週末の19352円から19912円にジャンプアップしたことに注目。それが「2万円回復」への抵抗を和らげる地ならしになっている。
需給動向も確認しておくと、東証が発表した11月2~6日の週の投資主体別株式売買動向は、外国人が1318億円の買い越し、個人が1360億円の売り越し、信託銀行が1385億円の売り越しだった。有力海外機関投資家のモルガンスタンレー、あるいはUBSなどの大陸ヨーロッパ勢が「2万円台早期回復」を見越して日本株に買い出動しているという話があるので、外国人の買い越しの行方は気になるところ。
6日時点の裁定買い残は1525億円増で2.6兆円まで増えたが、信用倍率は4.69で8月7日以来の低水準。その8月7日はまだ2万円台だった。カラ売り比率は9日は31%台、連続逆転勝ちの10~12日は34%。13日は35.1%に上がったが、それでも一時期の40%オーバーのアブノーマルな状況よりは落ち着いている。日米のVIX指数(恐怖指数)の低下に合わせて「ノーマルに、ノーマルに」というのが需給全体の方向性。そのため、前週は「鬼門」のSQ週でありながら、先物主導で一気に100円以上沈む「ゲリラ急落」がほとんど見られなかった。需給に変なクセがついていないのは2万円回復には好都合だ。
総じて言えば、今週は日経平均2万円回復にはチャンス到来。オシレーター系指標は「買われすぎ」シグナルばかりでも、ボリンジャーバンドは味方。需給も味方。「鬼門」のSQ週を無事通過した直後のタイミングも味方。決算発表シーズンの業績相場も上々の結果で終わった。さらに、前週12日までの7連騰では「2万円早期回復」を望んでいる海外の機関投資家の意志がひしひしと感じられた。