一政治家が強い信念を持ち、自らの思い、言動が国民や国の将来に「正しい判断」と確信できるものであったとしても、独裁国家でない限り、国の最高法規である憲法に基づいた手続きを経るものでなければ「民主主義」を破壊することになる。憲法を遵守し、ルールを守ることは政治家として「厳守すべき義務」だ。
安倍晋三総理に今求められているのは、まさに「その自覚」だろう。憲法9条(戦争の放棄)の憲法解釈を日米同盟強化と安全保障政策の充実(抑止力強化)、国際貢献拡充のために必要と衆参議席の多数を背景に強引に「変更(解釈改憲)した」昨年7月1日以降、立憲主義が崩壊し始めている。
安保法制は「解釈変更(解釈改憲)の閣議決定」を根拠に国民世論の大多数が慎重審議を求める中で強引に成立させた。
そして、今また、政府・与党は憲法53条(内閣の臨時国会召集)を総理の外遊日程や新年度予算の編成、今年度補正予算の編成などを理由に「形骸化」しようとしている。
憲法53条は「衆参どちらかの議員数の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならない」と規定する。
政府・与党は「臨時国会を開くよう要求を受けてから何日以内に臨時国会を召集しなければならないかは書いていない」などと、臨時国会を開かず「通常国会を前倒しし、1月4日に召集することで了承してほしい」(自民党・谷垣禎一幹事長)とその主張がいかにも正当なように提起した。
民主、維新、共産、社民、生活の各党が「臨時国会を通常国会の前倒しで代替することはできない」と反発したのは当然だ。憲法の規定に限らず、時の政府・政権与党が自らに都合よく法文解釈を行えば、法的安定性は失われ、立憲主義破壊、民主主義破壊につながる。
野田佳彦前総理は臨時国会が総理外遊日程や予算編成などで開けないとする政府・与党に「今年だけですか。去年も一昨年も窮屈だ。11月は国際会議が目白押し。でも、国会を開いているから国際会議を往復し質疑を受ける。歴代首相は当たり前のようにやってきた。安倍首相だけそれをサボるのか」と強く非難した。「国会審議から逃げようという魂胆でしょうか」と皮肉った。
国会で野党の疑問に答弁を通して政府の考えを国民に発信するのは政府の責任であり、義務といわなければならない。国民に責任を持つ姿勢を『年内の臨時国会』で明確に果たすことが強く求められている。(編集担当:森高龍二)