人為起源メタン排出地域では周辺よりもメタン濃度が高いことが判明

2015年11月29日 21:06

 メタン(CH4)は温室効果ガスの一つであり、二酸化炭素に続いて2番目に温室効果の寄与があるという。発生源は天然ガスの漏出、反芻動物である家畜の飼育、稲作、ごみの埋め立て等の人間活動によるもの(「人為起源」のもの)が約6割であり、残りは湿地等の「自然起源」のもの。メタンの大気中の寿命は他の主要な温室効果ガスに比べ短く、約12年とされている。

 大気中濃度は人為起源による排出量増加により産業革命前に比べて2.5倍に増加した。このため、今後世界各国が地球温暖化対策を強化するにあたって、人為起源のメタン排出量を精度良く評価することは非常に重要となっている。

 今回、環境省、国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した世界初の温室効果ガス観測専用の衛星である温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT(ゴーサット))の3年半に取得された「いぶき」による観測データを解析した結果、人口密集地域、大規模な農業地域、天然ガス・石油の生産・精製地域などの人為起源メタン排出地域で周辺よりもメタン濃度が高いことが判明した。

 さらに、「いぶき」で観測された人為起源メタン濃度と排出量データ(インベントリ)から推定された人為起源メタン濃度との間に強い正の相関関係があり、「いぶき」は人間活動によるメタン排出に伴う濃度上昇を検出できる可能性が高いことがわかった。そして、「いぶき」は人為起源メタン排出量(インベントリ)の監視・検証ツールとして有効利用できる可能性があることがわかった。

 今回は「いぶき」による濃度観測データから人為起源メタン濃度を、3段階の手順によって求めた。まず、人為起源メタン排出量データ(各種の排出カテゴリデータに基づく排出インベントリ)と大気輸送モデルを用いて、「人為起源」のメタン排出によるメタン濃度の時空間分布を推定する。次に、この推定濃度分布を基に、「いぶき」によるメタン濃度観測データを、「人為起源」のメタン排出の影響を受けているデータと受けていないデータとに分類。そして、「人為起源」のメタン排出の影響を受けている各観測地点のデータから、その周辺で影響を受けていないデータの平均値を差し引くことにより、人為起源メタン濃度を見積もった。
 
 今回の結果は、「いぶき」や将来の衛星によるメタン濃度観測値が、人為起源メタン排出量(インベントリ)の監視・検証として有効利用できる可能性があることを示しているという。今後さらに、人為起源メタン濃度の推定精度を高めるために、より高頻度で多数の衛星データを利用して調査・研究・解析を進める予定。また、衛星によるメタン濃度観測値から人為起源のメタン排出量をより正確に推定するために、より高精度なモデル数値実験や排出量インベントリの改良研究やその評価に取り組む予定だ。 (編集担当:慶尾六郎)