「広さ」から「高さ」へ。住宅が高く伸びることで見えてくるもの

2015年12月05日 19:16

 住宅市場のトレンドは今、「広さ」から「高さ」に移行しつつあるようだ。

 とくに都市部における住宅密集地の大きな課題は、何といっても「敷地の狭さ」だ。交通や買い物、公共施設など、利便性においては田舎暮らしに比べて圧倒的なメリットがあるものの、それと反比例するかのように、敷地が狭くなってしまう。狭くても便利な都会暮らしか、それとも不便でもゆったりとした田舎暮らしか。

 ところが、土地の「広さ」ではなく「高さ」にフォーカスを変えることで、その選択肢がもう一つ増えるのだ。つまり、土地が狭いのなら多層階住宅にすれば、延床面積が増えて居住スペースが広くなるというわけだ。敷地のポテンシャルを最大限に生かすことで、都心部に住みながらも、充分な生活スペースを確保することも可能になる。

 階数が増えることで得られるメリットを具体的に挙げてみると、次のようになるだろう。 まず「居住スペースが広くなる」ことはもちろん、高くなることで「採光、眺望、通風が得やすくなる」という利点がある。さらに、一階部分を駐車場スペースにしたり、二世帯住宅や、賃貸・店舗併用住宅にすることも可能だ。とくに二世帯住宅や併用住宅は、節税対策としても有効で、人気が高い。

 大和ハウス工業<1925>は「軽量鉄骨ブレース構造」のxevo03で、2階建て住宅よりも各階「プラス1帖の広さ」を提案していたり、トヨタホームでは多層階にすることで広がった空間を上手く活用した中庭テラスなど、独特の間取り提案も行っている。

 大手メーカーの中でもとくに、多層階住宅に力を入れているのがパナホーム株式会社<1924>ではないだろうか。同社では、工業化住宅初の7階建てまで対応可能な重量鉄骨の都市型多層階住宅「Vieuno(ビューノ)」を販売しているが、その戦略営業拠点として、昨年4月より、東京・神奈川に累計6ヶ所の「Vieuno Plaza(ビューノプラザ)」を開設し、多層階住宅に関するさまざまな情報発信やコンサルティングを行ってきた。そして11月21日(土)にはついに、関西初となる「Vieuno Plaza神戸元町」をオープン。神戸を中心とした関西エリアの戦略拠点として、多層階住宅販売に本格的に乗り出す姿勢を見せている。

 土地が狭くなっているのは、何も東京エリアに限ったことではない。景観条例などの制約が多い京都はともかく、パナホームの展開によっては、他のメーカー各社も追従すれば、大阪神戸を中心とした関西エリアでも多層階住宅の需要は飛躍的に高まるのではないだろうか(編集担当:藤原伊織)