税引き後の当期純利益1割以上を給与へ法整備を

2015年12月05日 14:32

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厚生労働省の調査で今年中に賃金引き上げが調査対象事業所の85.4%で行われた、あるいは行われる予定であることが確認できたが、問題は賃上げの内容だろう。また小企業・零細企業にまでは賃上げは広がっていない。

 政府は日本経済団体連合会などの要請に応え、法人実効税率を1年前倒しして2017年度に20%台にする方針で、現行の32.11%を29.97%にまで「2.14%」引き下げる模様だ。

 法人課税を引き下げることで企業の設備投資を増やし、従業員の賃金を引き上げることを安倍晋三総理ら関係閣僚が経営者らに呼びかけている。

 厚生労働省の調査で今年中に賃金引き上げが調査対象事業所の85.4%で行われた、あるいは行われる予定であることが確認できたが、問題は賃上げの内容だろう。また小企業・零細企業にまでは賃上げは広がっていない。

 4日に開かれた衆院経済産業委員会での閉会中審査で民主党の近藤洋介議員が法人税の引き下げについて「賃上げに結びつくのか」政府が狙う効果に疑問を提起した。

 3年間の安倍政権下で企業の経常利益は16兆円増え、設備投資は5兆円増えた。一方、従業員の給与は3000億円しか増えなかったという実態がある。企業はほとんどを内部留保した。

 安倍政権が法人優遇税制を推進し、設備投資や賃上げに結びつけることから経済再生・景気の好循環を実現するというが、より効果を狙うなら設備投資には「設備投資減税」を、賃上げには経常利益の1割以上とまではいわないが「税引き後の当期純利益の1割以上を従業員給与に還元する法整備」を行うくらいの強い姿勢こそ望まれる。

 給与に関してこうした規定があれば、3年間で従業員の給与は3000億円の増でなく、相当の上積み増になった。世帯当たりの可処分所得が増え、個人消費の伸びは景気の好循環へ強い後押しになっただろう。景気変動に対応できるよう賞与で反映させればよい。

 「税引き後の当期純利益の1割以上を従業員給与に還元する法整備」を行う一方で、バランスを保つため「税引き後の当期純損失の1割までは従業員給与に反映させることができる法整備」も当然だ。

 賃金アップや設備投資にも即効性のある政策が必要になった。雇われ社長といわれる経営者が増えたため経営陣には自らの保身もあり、従業員より株主優先傾向が強い。「税引き後の当期純利益の1割以上を従業員給与に還元する」とした法規定が設定される方が経営者は従業員給与に対応しやすくなるだろう。企業の内部留保が膨らむばかりの傾向では、こうした規定の必要を感じる。(編集担当:森高龍二)