【2015年振り返り】マック、吉野家、KFC… 不調の外食産業で好調分野は?

2015年12月31日 13:41

画・【2015年振り返り】マック、吉野家、KFC… 不調の外食産業で好調分野は?

フォアグラ、焼肉、ステーキ…。ファミレス各社は高級感のある1000円超えのメニューの投入で売り上げを押し上げた。ターゲットは時間や財布にゆとりのあるシニア層。ここにも少子高齢化の影響が表れている

 12月22日、外食業界に大きなニュースが走った。「日本マクドナルド<2702>、米本社が売却を検討」。同社の筆頭株主のである米マクドナルドが、約5割を握る株式の最大約33%分の売却を検討、日本の大手商社などに打診していると報じられた。同社の12月期連結決算の売上高は前年同期比10%減の2000億円、営業利益は250億円の赤字(前期は67億円の赤字)。最終損益も380億円の赤字(同218億円の赤字)と2期連続の大幅赤字の見込みで、380億円の純損失を計上する見通しだ。客数も31カ月連続で前年割れしており、浮上の兆しがなかなか見えてこない中でのニュースだった。
 
 14年7月に中国の工場で期限切れ鶏肉の使用問題が発覚し、ことし1月には異物混入も表面化。売り上げが急減したところに原材料費の高騰が直撃、現在全国の不採算店が続々と閉店している。国内最大面積で308席を有する「マクドナルド原宿表参道店」(渋谷区神宮前)もそのひとつ。16年1月15日に閉店する予定で、ビルには「テナント募集」の垂れ幕が下がっている。原宿という「若者のまち」での閉店は多くの人に驚きを与え、事態の深刻さを物語った。

 ファストフード業界は他社も苦戦続きだ。11月にはケンタッキー・フライド・チキンを運営する日本KFCホールディングス(HD)<9873>の保有株式を、三菱商事<8058>が最大689万株売却すると発表した。日本KFC HDは15年3月期の連結決算で11年ぶりに最終赤字に転落していた。売上高は前期比1%増の846億円と久しぶりにプラスに転じたが、営業利益は63%減の6.7億円と大きく落ち込み、最終損益は5.2億円の赤字(前の期は4.4億円の黒字)だった。宅配ピザを手がける「ピザハット」事業の収益の悪化で4億8100万円の固定資産の減損損失を計上したことが影響した。

 ファストフードの代表格・牛丼チェーンも不振から抜け出せない。吉野家ホールディングスの<9861>15年3~8月期の連結決算は、純利益が前年同期比32%減の6億6300万円。牛肉の輸入価格が高騰して原価負担が重くなり、14年12月に値上げを余儀なくされた影響が残っている。同様にすき屋、松屋も客数を減らしている。

 消費増税以降の消費マインド低迷に円安による原材料の高騰や人件費・家賃のコスト上昇など、業界を取り巻く環境は厳しさを増しているが、一方で好調ぶりを見せている業態がある。ファミリーレストランだ。10月の外食市場動向調査では全体売上が前年比107.0%となり、30か月連続で前年を上回った。特に焼肉はファミリー層の客数が増加、売上げは同114.8%となった。ガストやジョナサン、バーミヤンなどすかいらーく系列の店舗では、フォアグラや国産牛肉を使った1000円を超えるメニューを投入して客単価を上げることに成功した。ロイヤルホスト<8179>やデニーズも同様に客単価が上昇。すかいらーく<3197>担当者によると、「1000円以上注文するシニア層が増えている一方で、学生やファミリー、世帯年収400万円以下の来店客は減った」とのことで、客層が変わってきていることがうかがえる。

 財布に余裕のある層が「せっかく外で食べるのだから」と、多少高くても上質なものを選ぶようになってきた。以前は300円を切る金額で提供していた牛丼チェーン・松屋フーズ<9887>の緑川源治社長も「消費者は500円前後の価格帯でもおいしさを求める傾向が強まっている」と話す。

 その一方で、かつてマクドナルドや吉野家を利用していた安さを求める層が外食自体を避けるようになったり、コンビニやミニスーパーを使うようになったりしている向きもある。「若者のまち」原宿で、安さを売りにしていたマクドナルドが閉店したのはその顕著な例ではないか。デフレが叫ばれた時代に強さを見せた各社が苦戦しているのは、消費者の二極化の表れかもしれない。 (編集担当:久保田雄城)