今年4月から、いよいよ電力の小売り自由化が開始される。また、2017年にはガスの小売全面自由化も控えていることもあって、HEMSに対する注目が再燃している。HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)はご存知の通り、家庭内のあらゆる家電製品をネットワークでつなぎ、エネルギーの「見える化」や、状況に応じた最適なコントロールを行うことで、より省エネで快適な暮らしを実現するシステムのことだ。
HEMSは、政府も推し進めるエネルギー自給型住宅「ZEH」に欠かせないシステムだ。政府は、2020年にはZEHを新築住宅の標準仕様とし、30年には新築住宅の平均でZEHを目指す計画を打ち出していることからも、HEMSは今後、特別な追加オプションではなくなってくることは間違いないだろう。
HEMS市場の活況に伴って、無線通信規格Wi-SUNへの関心も高まってきた。Wi-SUNは2012年に免許不要で利用できる帯域として920MHz帯が割り当てられたが、無線LANなどの2.4GHz帯に比べて、他の機器などからの干渉も少なく、電波到達性が高く、障害物にも強いことから、HEMSに適しているといわれてきた。とくにメーター系は電波が届きにくい場所に設置されることが多いため、2.4GHz帯だと通信が途切れることがあったが、920MHz帯では、複数の端末がデータを中継して結ぶマルチホップ通信を利用することで、その心配がほとんどなくなる。また、低消費電力であることも大きな魅力。省エネのシステム自体が電力を大きく使っているようでは本末転倒だ。ちなみに単3乾電池3本で10年以上動作できるモジュールもすでに開発されている。
そんなWi-SUNが、さらに進化したのが「Wi-SUN HAN」。HANとは「Home Area Network」の略称だ。日本の独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)が中心となって設立し、現在、富士電機<6504>や村田製作所<6981>、ローム<6963>など約60社が加盟する「Wi-SUNアライアンス」が2015年1月末に、スマートメーターやHEMSと、家電製品などを連携させるHAN用の無線規格として新たに策定したものが「Wi-SUN HAN」である。Wi-SUNが「Bルート」と呼ばれる1対1の通信であるのに対し、「Wi-SUN HAN」は多数の家電製品と繋がり、1対多数の通信に対応可能なのが大きな特長だ。
メーカー各社では、すでに「Wi-SUN HAN」対応商品の開発競争が始まっており、昨年11月末には、Wi-SUNアライアンスのメンバーの中でもWi-SUNモジュールの開発を積極的に行ってきたロームの特定小電力無線通信モジュールが、世界で初めて「Wi-SUN Profile for Echonet Single-Hop HAN」の認証、並びにCTBU(Certified Test Bed Unit)認証を取得するなど、市場での大きなアドバンテージをとっている。
また、Wi-SUNはその特性上、野外での利用にも適していることから、農業用途、災害対策、橋梁などの建造物の状態管理などの分野での活用も期待されている。スマートコミュニティの加速ともに、2016年はますますWi-SUNへの注目が高まりそうだ。(編集担当:藤原伊織)