がん登録で患者は救われるか

2016年01月17日 18:42

 2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬという現代の日本社会。国では、その対策の1つとして、「がん登録制度」を設けた。2016年1月から「がん登録等の推進に関する法律」に基づいて、がん治療・研究の総本山である国立研究開発法人国立がん研究センターに、がん対策の情報基盤として「がん登録センター」を開所した。

 今年から義務付けられた「全国がん登録」は、国民のがんのデータをひとつにまとめて集計・分析・管理する新しい仕組み。全ての医療施設に届出義務が課せられることから、患者が引っ越しなどで都道府県をまたがって受診した場合や複数の医療機関にかかったことによる重複やもれも防ぐことができる。一括したデータが得られることで、国としてのがん対策が立てられるため、効果的ながん対策の実行が可能となるとされる。

 センターでは、全ての医療施設から都道府県に提供されるがん情報を一元的に集約し、都道府県と国のがん対策の基盤として用いられるようにデータベースの整備、データの提供・分析を行うとともに、がん診療連携拠点病院等を中心に実施されている院内がん登録について、データ収集・分析とその提供についての支援強化を進める。また、がん登録には人材育成や収集ルールの徹底、手順の標準化が不可欠で、国立がんセンターがその分野でもリーダーシップを発揮するという。

 同センターでは、がん登録の確立で「がんにならない、がんに負けない、がんと生きる社会」を目指すとしているが、一方で患者団体などからは、それらの情報が本当に患者のために活用されるのか、集めた情報から都合のよい情報だけが公表されるるのではないのか、といった疑念も上がっており、今後の運用が注目される。(編集担当:城西泰)