勝ち組と負け組が明確になりつつあるEC事業

2016年02月28日 20:44

 矢野経済研究所では、国内のECサイト構築市場およびECサイト運営代行市場の調査を実施した。調査期間は2015年 10 月~2016年1月、調査対象はECサイト構築及び運営代行サービス/ソリューション提供事業者、その他関連企業等、調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
 
 それによると、2015年度の国内ECサイト構築市場規模(事業者売上高ベース)は、22,630百万円(前年度比106.5%)を見込んでいる。市場成長の背景としては、EC サイト構築案件の二極化傾向が挙げている。中規模から大規模EC事業者ではECサイトの新規構築ニーズはすでに一巡しており、構築フェーズから本格展開フェーズへの移行へと関心が移っている。特に、大手ECサイトでは、EC事業においての勝ち組と負け組が明確になりつつあり、勝ち組の企業がより戦略的な整備に着手する、リニューアルを目的とするECサイトへの再投資需要が活性化しているという。

 具体的には、他サイトとの差別化に繋がる魅力的なECサイト作り、ECサイト単独ではなくリアル店舗とのシナジー創出を実現するフェーズに移っており、オムニチャネル対応ニーズが増加している。一方、小規模EC事業者では新規での EC 事業参入が増加している。その背景には、ASPによるショッピングカートの登場による参入障壁の低減や、大手 ECモール内に出店したものの思うように売上げを伸ばせず、自社ECサイトでの事業参入をはかる事例が増加していることが挙げられる。

 2020 年度の EC サイト構築市場(同ベース)は 285億3000万円(2015 年度比 126.1%)に達すると予測している。従来の EC サイト構築支援サービスに何を付加価値として提供するかという点で、事業者の取り組みへの今後の方向性は大きく2つに分類されるという。1つは、オムニチャネル対応やマーケティング機能との連携強化などの「サイト構築周りでの収益拡大=機能強化」、もう1つは運営代行への対応や海外でのEC販売支援などの「サイト構築以外での収益確保=支援領域の拡大」であるとしている。

 国内のECサイト運営代行市場は EC市場の裾野拡大を背景に成長を続けており、2015年度の同市場規模(事業者売上高べース)は 1,5億5,000万円(前年度比 129.2%)に達する見込みである。要因としては、新規EC事業者数の増加や、大手EC事業者のBPO(Business Process Outsourcing)需要の増加、運営代行・支援領域の拡大(運営から物流代行、国内から海外での EC 支援まで等)が挙げられる。

 ECサイト運営代行市場(同ベース)は、2020年度には 25億9,000万円(2015 年度比 167.1%)に達すると予測している。国内EC市場の拡大に加え、海外販売のために越境EC(海外消費者へのインターネット販売)への対応強化を模索するEC事業者においては、今後も運営代行およびアウトソーシング需要は高まるものとみている。それらに対して EC サイト運営代行事業者側の体制整備が進むことで、着実に市場は拡大するとしている。(編集担当:慶尾六郎)