2016年の電子部品業界は、引き続きスマートフォン(多機能携帯電話)向け部品がけん引することは間違いないだろう。米アップルの次期iPhoneのデザインは大幅に変更されるという話もあり、さらに中国のほか、インドや東南アジアなどの新興国でも高速通信サービスに対応する端末の普及が始めることなど、好材料に恵まれている。しかし、業界内にはスマートフォン向け以外に軸足を移す動きも現れ始めている。
スマートフォンに変わる(あるいは、並ぶ)分野として、まずは自動運転技術が挙げられる。自動運転技術により電子化が進む自動車に対して、部品の提供のほか、用途開発に直結するソフト開発を行う動きがある。例えば、京セラ<6971>は自動運転の際に必要となるセンサーの画像処理ソフトなどの開発に取り組むとして、15年10月より20人規模の組織を都内で稼働させ、これを19年度までに200人にまで増員させるとしている。村田製作所<6981>は省電力分野のソフト開発を行うアメリカのベンチャー「ベデロソフトウエア」を買収することで、センサーにより集積した情報を処理するソフトを開発するための人員確保をはかっている。
次に挙げられるのが、IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)だ。業界大手は15年からIoT関連の取り組みを本格化させており、この傾向は16年以降も強まるものとみられる。村田製作所は、メガネメーカーなどと開発したデザイン重視のメガネ型ウェアラブル端末に、超小型スイッチモジュールを提供している。TDK<6762>は中国のインターネット検索大手「百度」が開発した油分や塩分濃度が計測できる箸「スマート箸」向けに、小型無線通信モジュールを提供している。部品の微細化はこれらの会社の得意とするところであり、日常にある様々なモノをインターネット化するIoTとの相性がいい点が、こうした傾向を促進する要因の1つだろう。
これら自動運転技術、IoTなどの分野へのシフトチェンジは、16年以降ますます強まるとみられ、今後はいかに各社が新たな顧客の要望などに対応できるかが、スマートフォンに次ぐ「柱」を確保する上で重要となる。(編集担当:滝川幸平)