昨年10月、トヨタは中期的な環境対応方針を発表した。その発表を受けてマスコミ各社がテーマとして採り上げたのが「2050年、“エンジン車ゼロ”計画」だ。つまり、地球温暖化につながるCO2(二酸化炭素)削減するため、トヨタは2050年を目途にディーゼル&ガソリンエンジンといった内燃機関を動力とするクルマの生産販売をほぼゼロにするという計画である。
同社によると、具体的な数字での比率は示さなかったものの、35年後の新車販売のほとんどが燃料電池車(FCV)をはじめとしたハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)といった車両に転換し、エンジン車は限りなくゼロに設定するという。
トヨタはFCV「MIRAI」で先行した燃料電池車の世界販売は、普及に向けて新型車の開発を進め、2020年以降に年間生産3万台以上とする目標を掲げた。日本では1万台超/年の販売を目指す。一昨年末に発売した市販車「ミライ」は日本で目標を超える約350台を販売した。が、生産が追いつかず、注文に応じ切れていない。現在でも納車まで3年以上かかる状態だ。欧米でも今秋から販売を開始。トヨタは、生産規模を2016年に約2000台、翌2017年に約3000台にまで増強する計画だ。
HVの世界販売も強化する。2014年のトヨタ製HVの世界販売は126万台ほどだったが、2020年までに150万台/年と2割近く増やす。これが達成されれば、HV累計販売台数が現在の800万台超から、東京オリンピック開催時に1500万台になる。トヨタではHV販売拡大のため、引き続き燃費改善やコストの引き下げ、低価格化を進めるとした。
昨年、トヨタは新たなクルマの開発手法であるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)で開発した初のHVモデル「新型プリウス」を発表した。
そして、年が明けたばかりの1月4日に矢継ぎ早にニュースリリースを発表。そのなかのキーワードは、DCM(データ・コミュニケーション・モジュール/車載通信機)で、トヨタ車ユーザーが、より安心で便利なカーライフを享受できるように「つながる」技術に関する取り組みを加速させる。IT化の進展など、変化する環境を踏まえ、「つながる」技術を通じ「もっといいクルマづくり」を更に推し進めていくとした。
具体的には、米国で2017年以降のモデル切り替えからDCMの搭載率を高める。その後、順次、米国以外の地域にも対象地域を拡大、クルマの「つながる」化を推進する。車両データの送信を行うDCM搭載を通じ、これまで以上に収集データを製品開発やアフターサービスに活用していくという。なお、DCM搭載車については、事故発生時のエアバッグ展開と連動した緊急通報システムを標準設定し、万一の際の迅速な初期対応をサポートする。
また、これに伴う膨大なデータ処理を行うため、ITインフラを大幅に機能拡張、現在のトヨタ・スマート・センター内にトヨタ・ビッグデータ・センター(TBDC)を構築し、DCMから収集するデータの解析、活用、各種サービスへの展開を行なうとも。さらに、現在は国・地域で仕様の異なるDCMを、2019年までにグローバルで共通化していく。その実現に向けて、DCM通信をグローバルに集約管理する機能をトヨタ・スマート・センターで構築するという。
つまり、トヨタの計画は、自社車両の走行や故障、メンテナンスなどの情報をすべてDCMで吸い上げてデータセンターで次世代自動車開発に用いる「IoT」時代に備えるということのようだ。(編集担当:吉田恒)