「登録小売電気事業者」199社の半数が売上高100億円以上 1兆円超が12社も

2016年03月07日 08:30

 2016年4月1日、電力の小売自由化が全面スタートする。これまで地域の電力会社10社が独占供給してきた一般家庭向け電力販売が一般企業にも解禁され、利用者はライフスタイルや価値観、価格に合わせ自由に販売会社や利用プランを選択できるようになるのだ。経済産業省の電力取引監視等委員会の審査を経て、4月以降に一般家庭への電力販売が可能となる「登録小売電気事業者」(以下、登録事業者)は2月23日現在、199社にのぼる。東京商工リサーチでは登録事業者199社の経営調査、分析を行った。

 それによると、新設企業などを除き、直近決算が判明した登録事業者141社のうち、売上高100億円以上は66社(構成比46.8%)にのぼったという。このうち、単体ベースの売上高1兆円超の大企業は12社(同8.5%)あった。また、上場企業は199社中24社(同12.0%)で、新たな有望市場へのビジネスチャンスとして電力の小売自由化に対する関心の高さを改めてうかがわせたとしている。

 登録事業者の本業では、電気業は63社(構成比31.6%)と3割にとどまり、異業種からの参入が7割を占めた。異業種参入組では放送業29社(同14.5%)、ガス業17社(同8.5%)など、地域に知名度が浸透している企業が目立った。この背景には、新規事業で既存の事業基盤を活かして有利に顧客囲い込みを図る狙いがあると思われるとしている。

 売上高100億円以上が66社(構成比46.8%)で、10~50億円未満が40社(同28.3%)、50~100億円未満が16社(同11.3%)と続き、1億円未満は9社(同6.3%)にとどまった。売上高10億円未満は19社(同13.4%)と約1割に過ぎず、新規参入組は中堅以上が目立った。特に、売上高50億円以上の中堅規模以上が82社(同58.1%)と半数を超えている。高い知名度や豊富な事業基盤を背景に、新規市場を有利に展開したい意図がうかがえるとしている。

 また、直近決算が判明した登録事業者141社の売上高ランキングでは、トップが石油元売最大手のJXエネルギーの8兆1,565億3,200万円だった。ガソリンスタンド「ENEOS」を絡めた割引サービスなどを打ち出している。以下、丸紅、伊藤忠商事、三井物産の総合商社が続き、上位12社までが売上高1兆円以上だった。ランキング上位には入らないが総合商社の三菱商事は、コンビニ大手のローソンと提携して設立した共同事業会社、MCリテールエナジー(TSR企業コード:015740552、東京都港区)を通じて参入。また、住友商事も100%出資子会社のサミットエナジーがケーブルテレビ最大手のジェイコムグループと提携した。大々的な広告宣伝で通信料とのセット割を打ち出すソフトバンクグループは、東京電力と業務提携して販売活動を展開する。また、上場企業は199社中24社(構成比12.0%)で、このうち東証1部上場が21社を占めたとしている。(編集担当:慶尾六郎)