ISOは、企業にとってどんな意味があるのか。認証取得のためにはかなりの費用と、書類作成の労力がかかるが、それに見合う効果はいかほどのものだろうか。
昨年9月、ISO9001:2008が大きく改訂され、ISO9001:2015が発行された。1987年の規格発行時以来、最大の改定といわれるポイントは「統一化」と「汎用化」の2点に集約される。改訂版では、これまでの品質マネジメントシステムという考え方をさらに発展させて、環境や労働安全などを含むすべてのマネジメントシステムを共通の仕組みに「統一」し、どの業種でも利用しやすいように「汎用的な表現」を用いることで、より利用しやすく工夫されている。そもそもISOとは「国際標準化機構」(International Organization for Standardization)の略で、その名の通り、国際間の取引をスムーズにするための共通の基準だ。実用的且つ分かり易いのは大前提でもある。
実用的且つ分かり易いISO規格の実用例としては、身近なものでは、デジタルカメラで使う「ISO感度」や、非常口の緑のマーク「ピクトグラフ」などがある。これらは世界共通の基準となっているため、国を超えて、誰にでもわかりやすく、利用しやすいISOの良い例といえるだろう。
また、同じことを事業や事業所、製品に置き換えた場合、ISOは取引相手の企業や商品・製品を評価するための有効な目安になる。とくに、企業名でのブランディングが確立されていない海外諸国に展開を考える場合など、日本企業というだけでなく、世界基準のISOを取得しているかどうかは大きな判断材料となるだろう。
例えば、欧州を中心に世界的に使用されているISO 13485:2003「医療機器―品質マネジメントシステム―規制目的のための要求事項」は、医療機器の設計・開発、製造、販売などにおける品質マネジメント規格だが、医療機器や精密機械などの分野ではとくに、ISOは重要な意味を持ってくる。
日本企業では、医療機器 総合ODMメーカーのサンテック株式会社や平沼産業株式会社、メディカテック株式会社などがこれを取得しているが、今年2月には自動車用防振ゴムで世界トップシェアを誇る住友理工株式会社<5191>も取得している。住友理工では医療分野への展開として、同社のコア技術であるスマートラバー(SR)テクノロジーを応用し、圧力分布の測定が可能な体圧検知センサ「SR ソフトビジョン」シリーズなどを、すでに国内市場向けに展開しているが、今後は世界市場への展開も見込んでおり、ISOの取得はそのための戦略的な意味合いも大きいと思われる。
ISOについては、その取得について否定的な意見も多い。実際、国内の特定の取引先や顧客だけを相手に商売を展開しているような中小企業の場合、費用や労力に見合うだけのメリットを得ることは、実感として難しいかもしれない。しかし今後、グローバルな展開を視野に入れている企業であったり、そんな企業と積極的に取引を行っていこうとするのであれば、ISOの取得認証は今後益々、重要で意味のあるにものなってくるのではないだろうか。(編集担当:松田渡)