数年前まで世界に冠たる白物家電メーカーが国内で切磋琢磨していた。だが、わずか数年で新興国を中心に低価格商品が市場を席巻し、国内の白物家電メーカーは淘汰の波にもまれている。
国内市場は人口減少や海外製品との低価格競争が起こっている。日本電機工業会(JEMA)の発表でも2015年(1-12月)の白物家電の出荷額は2兆2,043億円と前年比2.8%減少した。また、大手メーカーでは2016年3月期第3四半期までにおいて白物家電を含むセグメントも減収が多いなど環境は厳しさを増す。東芝は白物家電事業を中国の美的集団へ売却することを含めた再編を進めており、低コスト生産など優位にあるアジア企業を中心とした業界再編が動き出した。
東京商工リサーチによると、白物家電関連メーカー39社の2014年度(2014年4月期-2015年3月期)の売上高合計は3,984億1,300万円(前年比5.5%増)、税引き後当期利益合計は151億7,000万円(同19.1%増)と増収増益だった。2014年度は円安で資材高騰の影響が懸念されたが、増収でコスト上昇をカバーした格好となったとしている。
白物家電メーカー39社の売上高は、1億円以上5億円未満が13社(構成比33.3%)で最多だった。次いで、1億円未満12社(同30.7%)、100億円以上8社(同20.5%)の順。5億円未満の構成比が64.1%を占め、二極化が鮮明になっているが、小・零細規模メーカーの商品開発力が支えている側面が窺えるとしている。
今回の調査では対象外だが、主な大手家電メーカーでは白物家電を含むセグメント別の売上高(2015年4月~12月)が三菱電機を除き、減収となった。三菱電機は国内外の空調機器、冷蔵庫が好調だった。白物家電事業の売却が報じられた東芝、経営再建中のシャープは大幅に落ち込んだ。パナソニックは2月3日、2016年3月期連結通期業績予想で中国でのエアコン事業の落ち込みなどから売上高を下方修正した。家電大手メーカーは、国内消費動向の変化、中国の景気減速などが白物家電の業績下押しにつながっているようだとしている。
国内メーカーの技術力、ブランド力、価格競争力は、いまや海外の新興メーカーとの競合を前に優位性を失い、業績悪化を招いている。そこに豊富な資金力を背景に、国内メーカーの技術やブランドを狙う海外企業が出現している。2012年に旧:三洋電機の白物家電事業を中国のハイアール(海爾集団)が買収し、最近では経営再建中のシャープはEMS(受託生産)で世界最大手の鴻海精密工業(台湾)の出資受け入れを決定、再建を目指すことになった。また、東芝も白物家電事業を中国企業の美的集団への売却を基本合意したと公表するなど、低コスト生産で世界を席巻しているアジア企業主導の業界再編が動き出した。
中小メーカーは、ニッチ市場で付加価値を高め、活路を見出すことは可能だろう。大手メーカーは省エネや高付加価値製品で需要喚起を狙うが、高コスト体質で下請けや材料調達に多くの課題を抱えている。国内メーカーの多くは内需だけでなくグローバル市場でも厳しい価格競争に巻き込まれており、白物家電メーカーが生き残れるか、これから厳しい時代を迎えているとしている。 (編集担当:慶尾六郎)