矢野経済研究所では、国内のマンション管理市場の調査を実施した。調査期間は2015年12月~2016年2月、調査対象はマンション管理会社等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、及び文献調査を併用した。
それによると、マンション管理業界においては、管理員や清掃員、(技術系)社員等の人件費などの全体的なコストは上昇する一方で、管理組合からの継続的な管理費低減要請によって、管理費への価格転嫁は制限されるとともに、マンション共有部修繕工事については工事単価の上昇や厳しい受注環境が継続するなど、マンション管理会社を取り巻く環境は厳しいという。そのような厳しい事業環境において、新築分譲マンション物件受託や既築分譲マンションの管理会社の変更(リプレイス)による受託、既存管理物件の流出防止、修繕工事受注というマンション管理会社の 3 本柱の事業を如何に強化するかが、課題となるとしている。
2015年の国内マンション管理費市場(管理費ベース)は前年比2.5%増の 6,816億円を見込み、2016年は同2.4%増の6,978億円、2017年は同2.0%増の7,115億円、2020年には7,553億円まで拡大すると予測している。マンション管理費市場は、2008年のリーマンショックによる新築分譲マンション供給・竣工戸数の激減により、2010年以降の伸び率は2%台に急減した。しかしながら、同市場はストックビジネスであるため、新築分譲マンションが供給され続ける限り当該市場規模は伸び続けるものと考えるとしている。
ただし、その伸び率は今後、鈍化すると予測している。その理由として、第一には、2020年の東京オリンピックに向けて、都心 3 区(千代田区、中央区、港区)や湾岸エリアにおいては旺盛なマンション需要が見込まれるが、2017年に予定されている消費増税後には、新築分譲マンション供給戸数の伸び悩みが予想されることを挙げている。
第二に、管理会社の変更(リプレイス)に関する豊富な情報をもとに、マンション管理組合からの管理費の見直し等の減額要請が継続し、市場に負の影響をもたらすと考えられることを挙げている。
また、マンション管理費市場は、大手事業者の占有度が高い市場である。2014年のマンション管理会社各社の管理戸数、および管理部門売上高をベースとした上位10社のシェアは市場規模の40.6%、上位30社までのシェアは60%以上を占めるという。
2015年の国内マンション共用部修繕工事市場規模(工事金額ベース)は6,006 億円(前年比2.2%増)と見込んでいる。マンション共有部の修繕工事はマンション管理上、その多くは長期修繕計画により実施されるため、景気に左右されない安定的な需要を見込めるという。2017年に予定されている消費増税に向けて再び駆け込み需要とその反動減が発生すると推測されるが、その落ち込みは軽微にとどまり、修繕工事の適齢期を迎えるマンションストック数の増加とともに 2020 年に向けて市場は上昇基調になるものと考えるとしている。2016年の同市場規模を 6,485 億円(同 8.0%増)、2017年を6,207億円(同4.3%減)、2020年には6,788億円まで成長すると予測している。(編集担当:慶尾六郎)