東大とNTTドコモが不整脈と生活習慣病の関連性を解析する臨床研究を開始

2016年04月25日 08:33

 脳梗塞を発症した患者のうち約3割は、心臓の異常動作を引き起こす不整脈のひとつである、「心房細動」により心臓の一部に血液が滞留し、それにより発生した血のかたまり「血栓」が脳の太い血管に運ばれ詰まることが原因であるということが分かっている。しかし、実際に脳梗塞になった患者のうち、事前に心房細動の疾患があると診断を受けていた方は5割程度。心房細動は、日本では70万人以上に発生していると推定されているが、一過性であったり不定期に発生したりするため日常生活の中で発見することは困難である。このため、脳梗塞の原因となりうる心房細動をはじめとする不整脈を早期に発見することは、不整脈に起因する重篤な疾患の予防にもつながるという。

 今回、東京大学とNTTドコモ<9437>との社会連携講座として設置された東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 健康空間情報学講座では、Apple社のResearchKitを用いて、脈の揺らぎを管理・記録するスマホアプリ「HearTily(ハーティリー)」を開発し、成人(20歳以上)を対象に、このアプリを用いた不整脈と生活習慣病の関連性を解析する臨床研究を開始した。

 臨床研究(研究期間最長5年間)は研究参加に同意した20歳以上の日本在住の方が対象で、1年間継続して自身のデータを記録してもらう。参加者は「HearTily」を用いて、利用開始時と終了時に身長・体重などの基本情報と高血圧の有無などの既往歴や症状などを入力し1日1回(1分程度)脈拍を記録、1~2週間ごとに動悸の有無等の質問に回答してもらう。

 また、Apple社が提供している「ヘルスケアアプリ」を経由して計算された歩数等のデータを記録する。測定とデータの記録は参加者の任意。測定結果はグラフで表示され、参加者はこのグラフから脈のゆらぎを確認することができる。「HearTily」で計測した脈拍データは、利用開始時に登録したデータ(生活習慣病の有無など)とともに、日常生活の中で脈の揺らぎを調べ、不整脈(心房細動など)の発生傾向などを分析する研究データとして使用する。参加者から提供される、測定データ、生活習慣情報、簡単な病歴を大規模に収集・解析することによって、不整脈と生活習慣病の関連性を明らかにし、不整脈に起因する病気の予後の改善などへの応用に役立てていくという。

 なお、健康空間情報学講座では同様の発想から、着用するだけで心拍・心電位などの生体情報を取得できる機能素材「hitoe」を活用したウェア「C3fit IN-pulse(シースリーフィットインパルス)」をNTTドコモグループに勤務する男性社員が着用し、長期間(60日間以内に30日間、24時間連続着用)にわたって連続的に心拍・心電位の状態を計測し、不整脈の早期発見を検証する臨床試験も開始した。「C3fit IN-pulse」で計測した心拍・心電位などの生体情報をスマートフォンを介してクラウドサーバーにアップロードし、循環器専門医が確認する。健康に勤務している企業労働者における「心房細動」の発生率や傾向分析や、「hitoe」の予防医療ツールとしての有用性を検証する。日常生活の中で心房細動を早期に発見できれば、脳梗塞のリスクを発症前に検知できる可能性があるとしている。(編集担当:慶尾六郎)