2014年4月の消費税増税や 2012年以降急激に進んだ円安など、アパレル関連業者の経営環境が著しく悪化、昨年後半から倒産件数も増加に転じはじめている。加えて、この秋冬シーズンは、記録的な暖冬によりアパレル企業にとって稼ぎ頭である重衣料の販売が不調に終わったことから、さらに倒産が増加する懸念もあるという。
こうした状況を踏まえて、帝国データバンクは、2015年度(2015 年 4 月~2016年3月)のアパレル関連業者の倒産動向について、調査・分析した。それによると、2015年度のアパレル関連業者の倒産件数は、311件発生し、前年度比6.5%増で、2年連続で増加したという。東日本大震災の影響があった2011年度以来4年振りに 300 件を上回った。
小売・卸別で見ると、小売業は159件と前年度比3.0%減少。2014年4月の消費税増税の影響が一巡したことから、前年度に比べて減少した。一方で、卸売業は152件で、同18.8%増と大幅に増加。1ドル=120円台で推移した為替の影響によるコスト上昇と消費低迷の板ばさみにより倒産が大幅に増加し、過去 10 年で最大の伸び率となったとしている。
地域別にアパレル関連業者の倒産動向をみると、「関東」(構成比42.1%)、「近畿」(同29.6%)の割合が突出している。このうち「関東」は東京都が、「近畿」は大阪府が7割以上を占めており、2015年度のアパレル関連業者の倒産の51.8%が東京と大阪に集中。東京都における全業種の倒産件数は、2015年3月までに 6カ月連続で増加しているが、アパレル関連企業は都市部に集中しており、その倒産増加が東京都の倒産件数を押し上げているとしている。
2014年度は、消費税増税の影響から小売業者の倒産が大幅に増加したが、その影響が一巡した2015年度は減少に転じた。一方、卸売業者は、円安によるコスト増に加え消費不振から価格転嫁も難しく、その板ばさみから逆に大幅に増加した。また、記録的な暖冬から、利益率の高い重衣料において正価販売が難しくなったことでアパレル関連業者の利益を圧迫。今年に入ってからも3月にかけて倒産は増加傾向で推移している。
1月~3月はアパレル関連業者の決算期が集中しており、円安や消費不振に加え暖冬の影響が懸念される。業界環境が悪化するなかで大手アパレルでもリストラを進めており、その結果としOEM業者などの受注減少といった影響も考えられる。また、来年10月に予定される消費税の再増税に関する議論などもあり、小売・卸業者ともに今後の倒産増加のリスクは引き続き高いとみられるとしている。(編集担当:慶尾六郎)