3月15日、出版取次中堅の太洋社が東京地裁へ破産申請し、破産開始決定を受けた。2月5日に、自主廃業の準備に入った旨の文章を取引先へ送付していたが、売掛債権が予想以上に劣化していたため、債務全額を弁済する目途がつかなかったという。2月5日時点で300法人・800店舗の書店と取引していた。東京商工リサーチは、2月5日以降の太洋社の一連の動きに連鎖する形で倒産や休廃業した書店を調査した。3月14日までに、倒産は1社、休廃業した書店は14社(個人企業含む)、店舗数は16店舗に及ぶことがわかった。
それによると、2月5日以降に倒産した企業は、芳林堂書店の1社。出版取次では、2015年6月に栗田出版販売が東京地裁に民事再生法の適用を申請している。
2015年の出版社の倒産は38件で、2年連続して前年を上回った。読者ニーズの多様化が進む中で“本離れ”が指摘されて久しいが、中堅以下の出版社(製造)、取次店(流通)、書店(販売)は苦境に陥っている。出版物の販売価格の拘束を容認する再販売価格維持制度(再販制度)や委託販売制度の理念ともいえる「文字・活字文化の振興」、「多様な言説の確保」は、時代の変化と共に正念場を迎えている。
出版科学研究所によると2015年の出版物の販売額は1兆5,220億円で、11年連続で前年を割り込んだ。出版取次7社(日本出版販売、トーハン、大阪屋、栗田出版販売、日教販、中央社、太洋社)の2010年度(2010年4月期~2011年3月期)の単体売上高の合計は1兆3,962億円だったが、2014年度(栗田出版販売は2013年度分で算出)の売上高合計は1兆1,885億円に落ち込んでいる。また、出版社の倒産は2013年の33件を底に増加傾向をたどり、2015年は38件に達した。
出版物の販売が落ち込み、「出版不況」が顕著になる中、取次業者が生き残りをかけて他社の帳合書店を奪い合う資金力の競争を繰り広げた。結果、資金力に乏しい太洋社は有力書店の「草刈り場」となり急激な業績不振を招いたといえるとしている。
今回の調査で、店舗を閉鎖、または休業した書店の多くが地方に所在していることがわかったという。太洋社から他の取次業者へ帳合変更の手続きを進めた書店からは、「太洋社ほど柔軟な決済条件の提示はなかった」、「保証金の差し入れを要求された」、「帳合変更で書籍1冊あたりの利益率の低下が避けられない」などの声が聞こえてくる。この中のいくつかの書店は、2月5日以降の太洋社の一連の動きに連鎖して店舗運営を断念している。
太洋社は、3月1日に通知した「ご報告とお願い」の中で、同日までに帳合変更の目途がたっていない書店について「(当該書店の)財務状況、その他の事情」があると記している。このため、3月15日現在も帳合変更が出来ていない書店を中心に、店舗の閉鎖や休業、倒産がさらに拡大することも危惧される。
このままでは地域に書店が一店舗もない「書店空白エリア」が拡大する恐れがある。取次業者のパイの奪い合いのしわ寄せは、地域書店と地方の読者が受けることになるとしている。(編集担当:慶尾六郎)