トヨタ自動車が工場の生産設備をつなぐネットワークの規格に「EtherCAT(イーサキャット)」の採用を決定した。ドイツで開催された「ハノーバーメッセ2016」の会場で明らかにし、“自動車業界におけるフィールドネットワークの標準が決まった”と注目が集まっている。
トヨタ自動車<7203>が工場の生産設備をつなぐネットワークの規格に「EtherCAT(イーサキャット)」の採用を決定した。ドイツで開催された「ハノーバーメッセ2016」の会場で明らかにし、“自動車業界におけるフィールドネットワークの標準が決まった”と注目が集まっている。
EtherCATは、ドイツの老舗企業ベッコフオートメーションが開発したフィールドネットワークである。同社はIoTシステムに参入し、「インダストリー4.0」の標準通信技術を用いて、FA機器からプログラマブルコントローラー(PLC)を介さずにインターネット上のIoTシステムへ直接データを送れる機器を発表した。
フィールドネットワークとは、産業用ネットワークの一部を指し、コントローラとフィールド機器間の制御用通信を主な目的とする。IoTは「Internet of Everything(ありとあらゆるものが接続されたインターネット)という意味で、コンピュータなどの情報や通信機器に加えて世の中のさまざまなモノに通信機能を持たせ、インターネットで相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔測定などを行う。
EtherCATは、相互互換性を保つことを目的とし、2003年に設立された「EtherCAT Technology Group(ETG)」によって、機能要件や承認手順などが規定・管理されている。ETGの加盟国は国内で300社、世界で2400社にもおよび、今後も拡大が予想される。
トヨタは従来「FL-net」を標準として使ってきたが、対応機器が日本製にほぼ限定され、種類が少ないことやIoT化対応の必要性などを理由に、次世代ネットワークの選定を進めていた。
同社の大倉守彦先進技術開発カンパニー工程改善部長は「開発したのがドイツか日本かは関係なく、もっともいい技術を採用した」と述べ、EtherCATを「リーンな生産ラインを作るには間違いなく必要な技術」とした。
日本はFAで、世界に先駆けて自動化にまい進してきたが、同社は“つながらない閉鎖的な国産技術”にこだわらず、オープン化された通信規格であるEtherCATによって高速性と省配線化を実現する道を選んだ。一気にIoT化が進み、国内外における「つながる工場」のあり方が大きく変わるであろう。(編集担当:久保田雄城)