「オーガニック野菜だから安全!」とは必ずしも言い切れないのが現状。しかし味や栄養価には定評があるのも事実。今はお試しの宅配サービスや直売所がたくさんある。安心できる生産元やブランドを見つけて、その違いを楽しもう。
農薬を使わない有機(オーガニック)野菜。農薬や化学肥料を使わないため体によいとされており、一般野菜の3割増しほどの値段であるにもかかわらず多くの人が買い求めている。しかし、必ずしも健康・安全ではないとする見方もある。
まず指摘されている懸念点は「偽物」の存在だ。JAS(日本農林規格)協会は「化学肥料や化学農薬を避け、堆肥を使って作った畑で栽培した野菜」と位置づけている。しかし、農林水産省の関係者が「農家でも有機野菜とは何かよく分かっていない人が多い」と明かすように、その定義はあまり世間に認識されていない。そのため農薬や化学肥料を通常の半分以下に抑えて栽培した「特別栽培農産物」であっても有機野菜として売られることが多いのだ。
次に指摘されているのが「有機野菜にも農薬が使える」点だ。JAS協会は自身が認定している31種類の農薬に関しては使用してもよいとしている。これには石灰展着剤としてのカゼイン、ボルドー剤調製用としての硫酸銅などが含まれている。農薬を一切使わなくても、31種類の農薬を使っても、どちらも「有機」を名乗ることができるのだ。
そして、最も大きな問題が肥料についてだ。生ごみや家畜の糞尿を使用している動物性肥料は、発酵が不十分だったり塩分が多かったりすることがある。水はけの悪い畑にこのような肥料が入ると、硫化水素やメタンが発生して異臭を発してしまう。その光景は決して健康的ではないだろう。
さらに有機肥料を作る過程で病原菌が混入し、それが野菜に取り込まれる危険性についても研究が進められている。生ごみや家畜の糞尿には、サルモネラやO-157など食中毒を起こす病原菌が含まれている可能性がある。実際に厚生労働省が有機栽培と水耕栽培を対象に行った食品汚染調査では、野菜の一部からサルモネラが検出されたという。堆肥は本来、数ヵ月かけてじっくり発酵させる必要がある。しかし経験の浅い生産者が作ると発酵が不十分で堆肥の温度が上がらない。すると殺菌が不十分となり、病原菌が堆肥の中に残ってしまうのだ。
最後に、肥料の元となる家畜についても意識を向ける必要がある。牛や豚などの家畜の中には、大量の抗生物質を投与されて育てられているものもあるからだ。そのような家畜の糞尿が肥料になっていると考えると果たして安全といえるのか、これも疑問だろう。
もちろん、できる限り農薬も肥料も使わないで本当に健康に良い有機野菜作りに取り組む農家もたくさんいる。有機野菜は味がよく、栄養価の面でもメリットがある。正しいものをきちんと見分ける知識をつけて、有機野菜を味わおう。 (編集担当:久保田雄城)