5月12日、燃費試験データの偽装問題で揺れている三菱自動車工業<7211>は、日産自動車<7201>と業務提携に向けた基本合意書を締結し、日産を割当とする第三者割当増資をすることを発表した。
これを受け、東京商工リサーチは日産と三菱自の取引状況の緊急調査を実施した。その結果、直接取引がある1次仕入先は日産1,520社、三菱自1,068社で、2社と取引している先(重複取引)は277社だった。産業別の1次仕入先は、日産、三菱自ともに製造業が最も多かった。日産の主導による再建が進んでいくが、業務提携による影響が取引先にどのように波及していくかが注目されるとしている。
日産の1次仕入先は1,520社。外注など下請が多く占める製造業が691社(構成比45.4%)で最多だった。以下、卸売業307社(同20.2%)、サービス業他278社(同18.2%)、情報通信業125社(同8.2%)、建設業46社(同3.0%)と続く。1次販売先は366社で、販売店(ディーラー)向けを指す小売業が160社(同43.7%)と最も多かった。
三菱自の1次仕入先は1,068社だった。日産と同様に製造業が最多で544社(同50.9%)と過半数を占めた。次いで、卸売業232社(同21.7%)、サービス業他138社(同12.9%)、運輸業48社(同4.4%)の順。1次販売先は305社で、小売業が126社(同41.3%)と最も多かった。
日産、三菱自の2社と取引している先(重複取引先)は、1次仕入先が277社だった。このうち、製造業がの78社(構成比64.2%)が最多で、卸売業63社(同22.7%)、サービス業他17社(同6.1%)の順だった。日産の1次仕入先(1,520社)に占める重複取引先の比率は18.2%、三菱自(1,068社)は同25.9%となったとしている。
地区別の1次仕入先では、日産は関東が1,141社(構成比75.0%)と関東に本社を置く企業との取引比率が7割を超えた。次いで中部の158社(同10.3%)だった。一方、三菱自は関東が374社(同35.0%)で最多だったが、名古屋製作所がある中部は298社(同27.9%)、水島製作所がある中国は175社(同16.3%)と製造拠点がある地区に本社のある企業との取引比率が高く、日産との違いが表れたとしている。
日産の2次仕入先は、1次と同様に関東が最も多く2,870社(構成比56.5%)だった。次いで中部859社(同16.9%)、近畿740社(同14.5%)の順だった。 三菱自の2次仕入先は、関東が1,610社(同39.0%)で最多で、中部1,112社(同26.9%)と続く。中部は、日産では1次、2次仕入先ともに10%台であったのに対して、三菱自では3割近くに及んでおり、中部経済への影響が注目されるとしている。
三菱自の仕入先や販売店の不安が高まるなか、日産の出資を含めた業務提携が発表された。今後、日産主導で再建が進められていくことになるが、三菱自は度重なる不祥事より低下した信用を取り戻すまでに相当の時間が必要だと同社ではみている。
自動車は使用する部品点数が多いため、多くの協力業者との取引が必要で、雇用面などで地域経済に大きく貢献している。今回の調査で、三菱自は生産拠点がある中部や中国地区に多くの仕入先を抱えていることがわかったという。また、三菱自は日産よりも中小企業との取引比率が高いこともわかった。日産主導の再建により、三菱自の車種が絞られた場合、三菱自への売上依存度の高い中小企業の経営に大きな影響を及ぼす可能性があり、再建プランを注意深く見守る必要があるとしている。(編集担当:慶尾六郎)