IT専門調査会社 IDC Japanは、2016年3月に実施した国内中堅中小企業(従業員規模:999人以下)ユーザー調査の結果を発表した。
2016年度(会計年)のIT支出予算については、前年度から「増加する」と回答した企業は3分の1程度で、2015年度のIT支出予算を「増加」と回答した企業の割合を若干下回った。また、約半数の企業が「同じ/変わらない」としていることから、2016年度においてもIT支出予算が慎重な中堅中小企業は依然として多いとIDCではみている。
中堅中小企業では、従業員規模にかかわらず、IT支出重点事項としてセキュリティ関連の項目を挙げる企業が多くなっている。セキュリティ関連項目の内、「情報漏洩対策」を挙げる企業が最多だが、2016年度、2017年度のIT支出重点項目では「ID/アクセス管理強化」または「脅威管理強化」の優先順位が高まっている。「マイナンバー制度」対応に加えて、サイバーセキュリティ犯罪が頻発しており、情報漏洩による損害が甚大となっていることから、中堅中小企業においても継続的なセキュリティ強化が求められているため、より高度なセキュリティ対策を検討する企業が増加していることが要因とみている。
中堅中小企業が抱える経営課題としては、「売上拡大」の回答率が昨年の調査と同様に最も高くなっている。円高などで不透明感が高まっている国内経済において、いかに業績拡大を図るかを課題とする企業が多いとみている。なお、IT活用による効果が期待できる課題としても「売上拡大」を挙げる企業が最も多くなっており、業績拡大を目的に戦略的なIT活用を図る中堅中小企業は現時点では一部にとどまっているが、今後徐々に増加することが見込まれるとしている。
ただし、「ITベンダーに不満を持つ点」として、特に小規模企業(従業員規模:1~99人)では「経営戦略に直結する相談ができない」を挙げる企業が比較的多くなっている。つまり、小規模企業では、業績拡大を目的としたIT利活用を模索しているものの、ITベンダーからの適切な提案などが無いことが不満につながっていると考えられるという。IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャーの市村仁氏は「ITベンダーは、ユーザー企業に対して経営課題(例:売上拡大など)に関する相談を受ける体制を構築すると共に課題解決につながるITソリューションの提案を積極的に行うことが重要である」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)