週刊金曜日「6月10日号」投書欄にとんでもない内容が載った。「テレビメディアの恥ずかしい自己申告」とのタイトルで、66歳男性の投稿だった。概要を紹介する。
「5月26日夕刻、ABCテレビのニュース『キャスト』を見た。(伊勢志摩サミットを)現地から伝える記者は、記者全員に無料で贈られたものだとして、革製の鞄を紹介し、よほど嬉しかったのか、中に入っている高価な品物まで出して見せた」。
「メディアセンターでは無料で飲食物が提供され、寿司は1時間ほどで無くなり、夕刻には松阪牛が振る舞われるのだと嬉々として伝える。贈り物を受け取り、ただで飲み食いをして、サミットを批判する記事など書けるはずがない。後ろめたさを感じるどころか、隠そうともしない」と記者の劣化を嘆き、「自分たちの『たかり根性』にも目を向けるべき」と指摘している。
男性指摘の革製鞄には土産品も入っていた。国際メディアセンターでの飲食物が無料であることは筆者も知っていたが、鞄に土産品まで入れ、記者全員に配られたというのは問題だ。サミットには国内外の250近いメディアの約6000人が記者登録されていた。鞄と飲食代だけでも投入された税金は相当な金額だ。
外国メディアの記者に対しては、日本の製品、そして松阪牛や寿司など食文化の良さを知って頂き、帰国後に、自社メディアで発信して頂けるメリットがあり、「おもてなし」の一環として、日本セールスの効果がこうしたサービスで生きてくるので、むしろ、今後も国際的催事においては継続していくべきと感じている。
一方、国内メディアの記者らが、こうしたサービスを受けるのは厳に慎むべきで、革製鞄などとんでもない話。辞退申し上げるのが良識。主催者にむしろ「こうしたことはすべきでない」と苦言を呈するべき。
取材する側、される側には一定の距離感が必要だ。「贈り物を受け取り、ただで飲み食いをして、サミットを批判する記事など書けるはずがない」。記事は記事と言いたいところだが、言われる通りだろう。受け取った国内メディア記者は上司に報告しただろうか。今後の為にすぐ返すことをお勧めしたい。
一方、国際メディアセンターでの飲食物の無料振る舞いも海外メディアに限定すべき。これは接待でなく、飲食物の宣伝効果が期待できるからだ。他方、国内メディア記者には1人あたり、1日パス券(飲食物含む)を2千円から3千円で行うよう制度設計する方が、主催者側、取材側ともに距離感を持って仕事ができる。
首長ら行政関係者と食事しながら意見交換することもあるが、各社それぞれ参加費を支払い、接待は受けない。
先の投稿に指摘された記者がどのような感覚かは分からないが、男性が指摘している鞄を受け取っていた国内メディアの記者は全員、提供者に戻すことを期待する。ABCテレビのニュース『キャスト』ディレクターはそのようなリポートを現地の記者がすれば「頂く筋合いのものではない」と突っ返すよう、番組内で指示すべきだったろう。「たかり根性」などといわれる行為は『記者を放棄する行為』。記事を書く上で命取りになる危険がある。記者は政府・政治家に対し「批判できる関係」を保つ必要がある。(編集担当:森高龍二)