全国280万社のうち女性社長は33万2,466人 2010年以降で最多に

2016年06月19日 14:23

 東京商工リサーチによると、全国280万社のうち、女性社長は調査を開始した2010年以降で最多の33万2,466人(前年31万55人)にのぼったという。女性社長は政府の「女性の活躍推進」などを追い風に5年間で1.6倍に増えた。業種ではサービス業など、小資本でも起業が容易な業種が目立った。地域別では「西高東低」が顕著で、同居家族が多い地域ほど女性社長が少ない傾向がみられ、女性の起業には家事や育児、介護などの課題を、地域や家族、行政がどう支援していくかが重要になっているようだとしている。

 都道府県別で女性社長数が最も多かったのは、東京都の8万6,274人(前年7万9,880人)で6年連続トップを維持した。次いで、大阪府2万9,472人(同2万7,678人)、神奈川県2万2,626人(同2万598人)、愛知県1万5,974人(同1万4,898人)、埼玉県1万4,008人(同1万2,891人)と、大都市が上位に並んだ。一方、少なかったのは、鳥取県1,232人、島根県1,328人、福井県1,573人と前年と順位は変わらず、人口に比例している。

 企業数と女性社長数を対比した「女性社長率」の全国平均は11.8%で、前年(11.5%)に比べ0.3ポイント上昇した。都道府県別で全国平均を上回ったのは12都府県だった。「女性社長率」の最高は、東京都の14.3%(前年14.0%)。次いで、神奈川県13.2%、兵庫県13.0%、福岡県12.98%、大阪府12.97%と続き、ここでも大都市圏が目立った。

 「女性社長率」の上位20位のうち、西日本は15府県(九州・沖縄6県、近畿4府県、四国3県、中国2県)がランクインし、「西高東低」の傾向が強まった。一方、比率が低かったのは、岐阜県7.9%、新潟県8.0%、山形県8.10%、石川県8.12%、福井県8.15%の順だった。「女性社長率」が低い地域では、「1世帯平均構成人員」が多い傾向がみられる。このことから少子高齢化が進む中で、家事や育児、介護などの家庭負担が、女性の起業にも影響が大きいことが透けてみえるとしている。

 上場企業の女性社長(代表執行役を含む)は30社(判明分、2015年12月現在)だった。産業別では、最多が大塚家具や日本マクドナルドホールディングスなど「小売業」とトレンドマイクロやネットイヤーグループなど「情報・通信業」の各6社、次いで、化粧品メーカーを含む「化学」の5社と続く。増勢が目立つ女性社長だが、上場企業での割合は全体の1%にも満たず、今のところ中小企業や個人事業が中心になっている。

 女性社長の増加は、政府が成長戦略の柱の一つに「女性の活躍推進」を位置づけたことも追い風になっているという。また、少子化を背景に、同族企業が多い中小企業では、能力が高くて事業意欲のある娘に経営を託す企業も増えている。さらに自治体や金融機関でも、女性の「プチ起業」を支援する環境が改善され、創業融資の実績が伸びている。こうしたことから、当分は女性社長の増勢が続くとみられる。女性の起業や経営者の増加は、経済活性化につながることが期待されるだけに、よりきめの細かい成長戦略に沿った実効あるサポートが求められるとしている。(編集担当:慶尾六郎)