矢野経済研究所では、プリンタ(出力機器)の世界市場の調査を実施した。調査期間は2016年4月~6月、調査対象:プリンタ(出力機器)メーカー・販売店/パートナー・各種部材メーカー。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
2015年度のプリンタ(出力機器)世界市場は、日本国内では大手コンビニエンスストアの MFP リプレイス(入れ換え)など大口案件もあったが、中国市場における成長鈍化や欧州市場での景況感への不安などから出荷台数は伸び悩んだ。2015年度のプリンタ世界出荷台数は1億350 万台、同出荷金額は6兆2,675億円(いずれもメーカー出荷ベース)となった。
2016年度は2016年6月にデュッセルドルフでdrupa2016が開催され、この展示会の開催時期に合わせて多くの業務用プリンタの新機種が発表・発売されるなど、市場が活気付いている。業務用プリンタにおいては、デジタル印刷機を中心にユーザー企業のニーズが拡大しており、2016年度以降のプリンタ世界市場を牽引していく見通しであるとしている。
その他にオフィス向けプリンタ市場では大容量インクタンク搭載のインクジェットプリンタや、カラーMFPの出荷台数が増加すると予測する。また、業種や業務に特化した、さまざまなプリンタが上市されていることや、ユーザー企業側にデジタル印刷機等で上位機種への入れ替え需要が見られることなどから、2016年度の出荷金額は拡大する見通しである。これらの状況を踏まえ、2016年度のプリンタ世界出荷台数は前年度比 102.4%の1億600万台、同出荷金額は前年度比100.5%の6兆3,000億円(いずれもメーカー出荷ベース)と予測している。
2016年度以降のプリンタ(出力機器)世界市場を牽引していくと考えられるのが、デジタル印刷機である。2015 年度のデジタル印刷機世界出荷金額は世界的な景況の影響や、2016年6月のdrupa2016開催前の買い控えといった市況を受け、前年度比107.0%にとどまった。しかし、デジタル印刷機市場は、需要の裾野拡大によるエントリーモデルであるLight-Productionモデルの導入台数の伸長と、提案型営業強化による高位なモデルへのリプレイス(入れ換え)需要などが期待できることから、デジタル印刷機世界出荷台数は、2015年度から 2019 年度までの年平均成長率が7.2%で成長していくと予測する。
2015年度のデジタル印刷機世界出荷台数(メーカー出荷数量ベース)は7万1,165台であった。2016年度の同出荷台数(同ベース)は前年度比107.3%の7 万 6,352台になり、2019 年度には9万4,000台まで伸長すると予測する。また、2015年度のデジタル印刷機世界出荷金額(メーカー出荷金額ベース)は5,553億円であった。2016年度の同出荷金額は前年度比106.4%の5,907億円になり、2019年度には7,600億円に達すると予測している。
印刷方式別にみると、電子写真方式(カラー)が占める割合が最も大きくなっている。しかし、生産性の高さなどが評価され、インクジェット方式のウエイトが年々高まっている。また、電子写真方式(カラー)の上位クラスの機器についてはフォトブック用途での実績も多くなっている。印刷機メーカーが期待している Light-Pro モデルについては、ユーザー企業でのインハウス需要や軽印刷需要、中堅印刷企業での商業印刷の小ロット内製需要といった裾野を拡大していく必要があるとしている。(編集担当:慶尾六郎)