近年、工場の自動化が加速している。先般も、映像機器や事務機器などで世界的にも知られるキヤノンが、2018年までにデジタルカメラの生産ラインを完全自動化することを発表して話題になった。これまで熟練技術者に頼っていた高度な技能を、人工知能を持ったロボットを使った自動ラインに置き換えることで、最大2割のコスト削減を目指すという。
そもそも工場を自動化する主な目的とは、「生産コストの削減」と人口減少の中での「生産力の確保」だ。重工業の分野では、三井造船が5年間で150億円を投じて造船所を改装し、産業用ロボットなどを導入することで、生産効率の3割向上を目指すと報じている。また、体温計などの医療機器で知られるオムロンの主軸事業は工場を自動化する制御装置であるFA機器事業で、日本のみならず海外への展開も積極的に行っているという。
ロボットを利用した工場の自動化は世界的にも進んでおり、日本の企業が世界的に優位性を維持している成長分野の一つでもあるが、開発を進めているのはもちろん、わが国だけではない。ドイツでも第4次産業革命として、工場のスマート化を図る「インダストリー4.0」が国家プロジェクトとして積極的に取り組まれており、今後益々国際的な厳しい競争が予想される。どれだけ今の優位性を維持できるかが日本の経済にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。
とくに日本製のシステムには高度な信頼性が期待されている。大電圧や大電力を扱う産業機器は長期連続稼働や高温条件下など、厳しい環境で使用されることが多いため、高い信頼性が求められている。大きな電力を扱うにあたり、機器の異常や雷によってシステムの破壊や事故が起こってしまったら一大事である。これらの安全性に応えることが、この分野で日本企業が優位に立ち続けるためには必要不可欠だ。
例えば、人体保護やシステム保護の観点から、ほとんどの電子機器に搭載されている絶縁機能では、これまでフォトカプラなど多くの構成部品が使用されていたが、回路規模や経年変化などの信頼性に課題があり、耐久性、メンテナンスなどの面から改善が求められていた。
これについて、電子部品大手のロームがこの度、フォトカプラ不要で、小型化、省電力化、高信頼化を一気に実現する、画期的な産業機器インバータ向け、絶縁電源制御IC「BD7Fシリーズ」を開発し、業界の注目を集めている。同製品は従来、絶縁機能で用いられる供給電圧を調整する複雑な回路(フィードバック回路)が不要でも、本来の機能を果たせ、その分の消費電力と面積約4割が削減可能だそうだ。これにより、耐久性に課題があったフォトカプラが不要となるため、産業機器のメンテナンス頻度や保守作業の効率化にも期待されているという。さらに、同社の新開発の適応型オンタイム制御を採用し、絶縁電源制御 IC の課題であった負荷応答特性も改善。電圧変動200mV以下を実現し、こちらでも信頼性の向上に貢献している。
産業機器業界の自動化や小型化はますます進み、近い将来、工場の中には人の姿が見えない状態になる日が訪れるだろう。しかし、自動化、無人化だからこそ、安全面での配慮は今まで以上に必要となってくる。安全性・信頼性の高い製品は、日本企業が得意とするところ。大いに期待したい分野である。(編集担当:藤原伊織)