どうやら大企業/中堅企業を中心にIT投資が積極的になってきている。IT専門調査会社 IDC Japanは、国内企業のCIOや情報システム部門長またはそれに準じる立場の管理者を対象としてIT投資動向に関する調査を実施し、その分析結果を発表した。
2016年度の国内企業のIT支出計画は、全体では前年比で「変わらない」とする企業が6割以上を占めている。しかしながら、大企業(従業員数1,000人以上)/中堅企業(同100~999人)ではその割合が5割未満となり、「増加」が大企業では35%、中堅企業では31%に達し、ともに「減少」を上回っている。中国をはじめとする新興国経済の景気減速の影響も一部にみられるものの、業績を拡大あるいは回復させた大企業/中堅企業を中心に、ITに積極的に投資しようという動きが鮮明になっているとIDCではみている。
産業分野別では、金融と通信/メディアでIT予算の拡大傾向が強くなっている。大企業が占める割合が高い分野であることや、ITがビジネス上の競争力に直結する分野であることが影響しているとみられるという。また、セキュリティ対策/強化を重視する傾向は変わらず、従業員規模/産業分野を問わず、IT投資領域においても、IT部門の課題においても1位となっている。
IT部門が関与しないIT予算は、大企業/中堅企業を中心として、過半数の企業に存在している。ITが使いやすくなったという外部環境の変化にも後押しされ、会社方針のもと、営業/販売部門などの業務要件を把握するユーザー部門側でのIT導入を重視する傾向がみられるとしている。
IT部門の課題をみると、セキュリティの強化など、産業分野横断で多くの企業が抱える共通的な課題がある一方、金融の「システムの標準化/最適化」など、産業分野ごとに顕著な課題もみられる。国内ITサービス市場は2016年以降もプラス成長を続けるものの、その成長率は徐々に低下していくとみられます。このような状況の中、ITサービスベンダーは、企業の課題やニーズを的確に捉えた提案やサービス提供を行うだけでなく、「デジタル化がもたらすビジネスとITの融合は、ユーザー部門によるIT投資や内製化の動きなど、国内企業のIT投資にも変化を及ぼしている。ITサービスベンダーは、自らのデジタルトランスフォーメーションを進めることで、企業の変革をリードすべきである」とIDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの木村聡宏氏は分析している。 (編集担当:慶尾六郎)