投票日の「政党広告」選挙運動と峻別の方策を

2016年07月16日 09:29

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政治活動の自由は保障されていなければならないが、投票日当日の新聞、テレビ、ネットでの広告を選挙運動と峻別させる線引きは、掲載の是非を含め、次期、衆院選までに明確にしておくことが望まれる

 参院選を振り返って、最も驚いたのは10日、参院選挙投票日の各紙朝刊だった。安倍晋三自民党総裁(総理)の顔と「今日は日本を前へ進める日、4年前のあの停滞した時代に後戻りさせる訳にはいきません」とキャッチコピーを入れた自民党の5段広告が掲載されていた。

 目視確認で安倍政権を好意的にみてきた読売、保守系で知られる産経はじめ、日本経済新聞、原発で安倍政権に批判的な毎日、革新系とされる朝日まで、すべての新聞に掲載されていた。産経には幸福実現党も「新しい選択」とのキャッチコピー入り、半5段スペースの掲載があった。

 公職選挙法では「選挙運動」ができるのは投票日前日まで。選挙運動でなく「政治活動」という判断があるのだろう。しかし、投票日に「今日は日本を前に進める日」というフレーズ。さらに「アベノミクスのエンジンをフルに回転させることで、日本を力強く、前へ進めていきましょう」という文言は、自民党に投票をとアピールしているとしか、筆者にはうつらなかった。当然、公職選挙法に触れるのでは、とびっくりした。びっくりしたのは筆者だけではなかったと思う。

 自民党が選挙公示日に「今回の選挙はアベノミクスを前進させるか、後退させるか、それが問われる選挙」と党の声明を出していた。その声明に符合しているので、政治活動か、選挙運動か、広告内容は微妙。

 その微妙なラインを朝日、毎日まで掲載したのは営業と報道の力関係、愚かなことをしたと考えたくもないが、売り上げを優先したとすれば新聞社の信頼の命取りだ。最終的に「政治活動」と判断するに至ったのだろうが、本来、微妙な時には、10日でなく、9日の掲載で「明日は日本を前に進める日」で交渉すべきだった。

 選挙運動は「特定選挙に特定候補者の当選をはかることを目的に投票行為を勧めること」とあるが、参院選比例区(全国区)では候補者の名前を書く有権者がいる一方、党名を書く有権者も多い。

 特定候補者をどう判断するかは難しいが、広義に解釈すれば、党の候補としてリストに挙がっている候補者すべてを「特定候補者」と判断することも解釈上、できるのではないか。司法がこれをどう判断するかだが、裁判にでもかからない限り、分からないだろう。

 こうした間際らしい掲載は、出稿申し込みがあった段階で、報道側の姿勢として、読者が混乱する事態を避ける賢明さが必要だ。

 政治活動の自由は保障されていなければならないが、投票日当日の新聞、テレビ、ネットでの広告を選挙運動と峻別させる線引きは、掲載の是非を含め、次期、衆院選までに明確にしておくことが望まれる。(編集担当:森高龍二)