個々の健康状況をフィードバックすることで健康指標改善や糖尿病の発症予防につながる

2016年07月17日 20:32

 生活習慣病を予防するためには健康維持・増進から重症化予防まで幅広い取り組みが必要であり、個人の努力だけではなく、生活者に密着したサポート体制が必要となる。そのためには医療機関以外に地域の様々な資源を効率的・効果的に活用し、質の高い予防・医療サービスを提供できる仕組みをつくることが求められている。

 今回、総務省の調査事業では、ケーブルテレビやスマートフォン等のICTツールを用いた健康増進サービスを提供することによる健康意識の向上、健康的な生活習慣改善の効果、及び健康指標の改善状況等を調査した。

 この事業を受託したのは、NTTデータ経営研究所、三原テレビ放送、公立大学法人県立広島大学、広島県三原市である。これらは、この「ICTを活用した効果的な予防・医療サービス提供の調査事業」において、健康サービスの利用有無やフィードバック機能による効果の差を実証した。その結果、検査データや食事・アルコールの摂取状況、運動量等の個々の取り組み状況に応じたフィードバック等の情報提供を継続することによって、腹囲、BMI、HbA1c値などの健康指標改善をはじめ、糖尿病の発症予防につながると期待される成果を得たという。

 事業は、2015年10月から半年間、広島県三原市をフィールドに実施し、三原テレビ放送を中心にケーブルテレビ、スマートフォン等を用いた健康増進サービスを構築した。調査では、健康状態等に応じて住民100名を3群に割付け、サービスの効果検証を行った。

 各群の特徴は次の通りとなる。ア)コントロール群( 生活習慣改善への介入を行わない群(本実証の健康増進サービスを受けない群 ))、イ)記録・閲覧のみの群( 食事・血圧・体重・運動量等データを登録し、データの閲覧が可能な群 )、ウ)記録・閲覧+指導群( イ)のサービスに加えて取り組み状態に対するフィードバックが加わる群 )。

 生活習慣病予防サービス対象者の健康に対する意識は全体的に改善し、特にイ)記録・閲覧のみの群で有意に改善した。健康行動について、運動頻度は3群間で差はみられなかったが、週当りの飲酒量(g/week)は、ウ) 記録・閲覧+指導群のみ事前・事後で有意に減少したという。

 また、腹囲及びBMIは、ウ)記録・閲覧+指導群でのみ12月から2月の期間に有意に減少した。HbA1c値は、イ)記録・閲覧のみの群、ウ)記録・閲覧+指導群で12月から2月の期間で変化がなく、ア)コントロール群のみ同期間で有意に上昇した。これらの結果より、個別的情報提供サービスの対象者は、生活習慣の改善の重要性を認識して適正化に努め、また飲酒や食物繊維の摂取に積極的に取り組んだことが伺えるとしている。

 実証に参加した店舗が取扱う食物繊維を多く含む商品などのうち定期レコメンドを出した曜日(火曜日と土曜日)・及び翌日にお勧め商品の購入が増加した。レコメンド商品の配信がユーザの購買行動に影響を与えた可能性があると考えられるとしている。

 日本人対象の大規模長期コホート研究結果を基にして、実証前から実証後にかけてHbA1c値が5.6以下になった人数から導くことのできる医療費適正化効果を試算した。「2.健康指標の改善」において、ウ)記録・閲覧+指導群でHbA1c値が5.6以上から5.6以下に下がった利用者が10%増加(23%⇒33%)したことを述べたが、HbA1c値が5.6以下に下がることで、糖尿病発症リスクが10%下がるという研究結果から、三原市における5年後の医療費適正化効果は390万円/年になると期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)