7月25日に行われた日中外相会談で、中国・王毅(おう・き)外交部長が岸田文雄外相に対し、南シナ海問題について「日本は係争当事者ではない」と関与を強くけん制したことが駐日中国大使館HPで紹介された日中外相会談記事で明らかになった。
「日本が引き続き『上っ調子で介入』し、『下心を持って騒ぎ立てる』なら、『あなたたちの別の意図』が明らかになるだけだ」と非難していた。
下心や別の意図が、尖閣諸島をめぐる領有権問題や東シナ海でのガス田を巡る問題、海洋・海底資源を指していることが推測されるが、「国連海洋法条約に基づいて、フィリピンと中国の仲裁判断が下され、これに従う必要がある」と法の支配による平和的解決を支持することが、なぜ「上っ調子」の介入になるのか。
ここは、日本政府がG20の場でも、中国が「法の支配」に従い、仲裁判断に従うよう強く訴えていくことが求められているといえよう。
今回の紛争の当事者であるフィリピンのペルフェクト・ヤサイ外務大臣と岸田外務大臣は今月11日、1時間を超え会談し「南シナ海問題について『法の支配の重要性等』を意見交換し、紛争の解決へ協力関係を強化していくことを確認した」(外務省)。
王外交部長は「日本は言動を慎重に」と釘を刺したが、尖閣諸島で今月5日から10日にかけて連日繰り返された中国公船による領海侵入などは南シナ海問題に対する中国側のけん制とも受け取れる。
こうした動きに屈し、法の支配をG20で緩めるような表現になれば、力や威圧による支配、恣意的解釈による実効支配の正当化を生む余地をつくることになる。国際法に従い『法の支配・法順守の徹底』を南シナ海においても主張することが、東シナ海の安定に通ずることになる。9月のG20の議長国は中国だが、日本が毅然と対応することを期待したい。(編集担当:森高龍二)