水難事故の生存率は約半分。命運を分ける心臓マッサージの技術を身につけよう

2016年08月13日 18:27

画・防虫衣料市場活況の理由とは

自然に触れる楽しいレジャーは、常に危険とも隣り合わせであることを忘れてはならない。毎年、水難事故や遭難事故が増えるのもこの季節なのだ。

 夏から秋にかけてのこの季節、海やプールはもちろん、川や山など、アウトドアでレジャーを楽しむ機会が増える。しかし、自然に触れる楽しいレジャーは、常に危険とも隣り合わせであることを忘れてはならない。毎年、水難事故や遭難事故が増えるのもこの季節なのだ。

 とくに7月と8月は、水難事故の発生件数が年間の40%以上を占めるといわれている時期。警察庁の統計では2015年はこの2か月間だけで、事故件数580件、水難者677人、うち死者・行方不明者計268人となっている。ちなみに過去10年間の推移をみると、年間の水難者の数は1500人弱から1900人強の間で推移しており、そのうち死者・行方不明者は半数近い700人強から900人弱となっている。この統計からも、一旦水難事故が起きると、命にかかわる重大事故になる可能性が非常に高いことがよく分かる。

 例えば、水に溺れた時など、遭難者の生死を大きく左右するのが、周囲の人の救難スキルだ。近くにプロのライフガードが常駐していたり、すぐに救急隊が駆けつけてくれたりするような場所であればいいが、とくにアウトドアの場合は、すぐに救急が駆けつけることが難しい状況も多いだろう。総務省消防庁の報告では、2015年中の救急自動車による現場到着所要時間は全国平均で8.6分。海やキャンプ場では、それ以上かかることを覚悟しておいた方が良いだろう。

 しかし、いくらアウトドアだからといって、水難者や遭難者の状態が救急車の到着を待ってくれるわけではない。心停止状態に陥った場合、心肺蘇生法(CPR)を開始する時間が1分遅れることに、蘇生できる割合が7%~10%低下していくといわれている。また、10分経過してしまうと、蘇生確率が絶望的になってしまう。また、たとえ命が助かったとしても、完全に心臓が停止し、脳に酸素が送られない状態が3~4分以上続くと、重い後遺症が残る恐れがある。大切な家族や友人がそんな目に合わないためにも、日頃から、救命講習を受けるなどして、正しい救命方法を身につけておくべきだろう。

 とはいえ、心臓マッサージの訓練をする機会にはなかなか恵まれないし、一般人が正しい心臓マッサージを習得するのはなかなか難しいものだ。そこで今、注目されているのが、住友理工株式会社が開発した心肺蘇生法(心臓マッサージ)訓練センサーシステム「しんのすけくん」。同製品は、自治医科大学麻酔科学・集中治療医学講座兼救急医学講座の南浩一郎講師の指導のもとに製品化されたもので、住友理工が開発した圧力検知センサー「スマートラバー(SR)センサ」 を応用したシステムだ。

 心肺蘇生の訓練に使用する人形の胸部とモニター用のパソコンにセンサーシートなどをセットするだけで、心肺蘇生訓練の重要な要素である圧迫箇所、圧迫の深さ、最適なタイミングなどを検知し、リアルタイムでわかりやすく表示する。また、音声ガイドによる圧迫位置の指示も利用できる。訓練結果は、重要な要素ごとに得点化され、レーダーチャートで評価されるので、一般の人でもすぐに結果が出るので分かり易く、日本蘇生協議会(JRC)が公表した救急蘇生のためのガイドライン「JRC蘇生ガイドライン2015」に則した正しい技術の習得も容易になる。

 現在、各地の消防などにも導入されるなど、「しんのすけくん」を利用した救難訓練や講習会が広がりを見せている。もしかすると、あなたの自治体でも「しんのすけくん」を利用した訓練が行われることがあるかもしれない。家族や友人のもしもの危機にとっさに対応できるよう、機会があれば参加して頂きたい。(編集担当:藤原伊織)